第3話◆私の家族
私を思いやってくれたあの子たちには申し訳ないけれど、なんやかんやと言い訳をつけてどうにか先に避難してもらうことに成功。
すぐさま従魔達に集合をかけた。
私の家族は合計で5人?匹?
まずは“ガチャ丸”。種族は“鬼”、でもまだ子供。
けど子供だからと言ってナメてはいけない。“鬼”は戦場の華。多分私より強い。
次は“しーちゃん”こと“
体高が馬ぐらいある重量級の大猪で、ツララのような硬い剛毛の毛皮と分厚い皮膚で覆われた体は天然の装甲板、天に向かって突き出た凶悪な牙。フンっと鼻から吹き上がる氷の結晶は冷たい息によるもの。迫力満点なうち自慢のタンカー君。
でも普段はウリ坊サイズに擬態してもらってる。だってそのままだとおうちの中に入らないからね。
最後はウィプス三姉弟。
種族“炎魚”でお姉さん気質な“ウノ”と、“ボマー”でやんちゃな“ドス”、そして“サラマンダー”でおっとりさんな“トレス”。便宜上“ウィプス”と言ってるけど、正確には種族が“元ウィプス”ね。
以上が私の大切な家族たち。
私がアストレイリアで生きることを決めた一番の理由。
さて私も黄龍製の皮鎧を着込み、愛用の「星堕の
目指すはバスクオスカ平原のその先、フィオの森。いざ、討伐へ。
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最初のエンカウントは魔猿の群れ。
おそらくエド君達が見たって言ってた魔物だと思う。
すばしっこくて力も強い上に腕が4本もあって牙も鋭く、顔はヒヒそっくり。
紫の靄を纏っているから
故に自然の循環や摂理に反し、ただ秩序を乱し、汚すだけの存在。
「いざ!」と弓を構えた時、上から声がした。
「ノエル!何をやっているんだ!避難しろと言っただろう!!」
クィールに跨ったアンジーさんだった。
もう一人はリアムさん?
うちの常連さんの一人で爽やかイケメンのリアムさんもクィールに相乗りしていた。
偵察かな?
怒ったアンジーさんは尚も
「君一人で戦ってどうにかなる…」
言い終わる前にドォォーーーーンと腹に響く爆音で言葉がかき消されてしまった。
音の正体はガチャ丸のスキル「岩盤落とし」。
高く飛び上がって地面に武器、ガチャ丸の場合はトンファーを叩きつけることで蜂の巣状の罅が入るほどの圧がかかる対多数用の広範囲殲滅技である。
これで群れの一角はペシャンコになって消滅。
残りの群れはしーちゃんが爆走しながら曳き潰している。
戦うまでもないらしい。
でも二人とも久しぶりの戦闘なせいか、なんだか生き生きしてる気がする。
群れが全滅しそうな勢いなので私はしーちゃんの曳き洩らしを丁寧に一匹一匹ヘッドショットで仕留める地味なお仕事にチェンジ。
一方ウィプス三姉弟は私の周りをフヨフヨ浮かんでおサボり中。
この子達は享楽的なところがあるから面白そうなことにはすぐ反応するんだけど、めんどくさそうなことには動かない。
おそらく今は敵が弱すぎて興味をそそられないのだろう。
そんな私たちの隣にトスンと軽やかに降り立ったクィールとアンジーさん。
「私はノエルに対する認識を大いに改める必要があるようだ。あの大猪も今君の周りにいる炎達も君がテイムしたモンスターなのかい?それにノエル自身の弓の腕前も達人級ではないか!なぜ冒険者登録しない?一体君は何者なんだ?」
眉間にしわを寄せて難しい顔をする。
美人が台無しだよ。
リアムさんも
「驚いたよ。あの子達はノエルの従魔なのかい?いつも店でエプロンを付けていたのは子ゴブリンじゃなくて鬼!?」
と驚いている様子。
するとフィオの森から一斉に鳥達が飛び立ち、次いでいくつもの木々が倒れ、遅れてドォンという振動が伝わって来た。
その方向を見ると遠近感が可笑しくなったのかと思うほどにでかいサイクロプスが
(4階建てのビルくらいはありそう)
アンジーさんもリアムさんも愕然の表情のままただ立ち尽くしてその様子を眺めている。
Aクラス冒険者でさえそうなってしまうほどの邪悪なオーラがあのサイクロプスからは溢れているのだ。
でも、私は過去あれを見たことがある。
そう「女神の箱庭」初のレイドクエストで。
その頃の私はゲームはじめたてだったので小物とばかり戦っていたのだけど、最前線では多くのプレイヤーがあいつと戦っていた。
サイクロプスの動きは緩慢で攻撃も単調なんだけど、いかんせん大きいからこん棒一振り、腕の一振りで全てを巻き込んで吹っ飛ばす。
しかも本人は再生能力まで付いてるから切っても溶かしても、焼いてもすぐに再生されちゃって。
結局、最後の方はトッププレイヤー達に再生より早くミンチにされて終わったんだっけ。
とにかくあいつを倒せば
さて、今の私ならどうだろうか?
あいつは倒せそうかな?
ギルドや王都からの援軍はまだ来そうにないし、やるしかないよね!
このまま手を拱いていたらあいつに農場踏みつぶされちゃうもん。
と、気合を入れ「星堕の
弓を空に構え、スキル「星流槍」を発射。
すると無数の光の槍が空からサイクロプス目掛けて殺到する。
耳を劈くような悲鳴がサイクロプスから上がった。
ジュワジュワと噴煙を上げるサイクロプスの体は頭の片側から肩にかけてがドロリと溶けているものの、致命傷には程遠く、しかもどんどん再生されていっているのがわかる。
それをさせまいとウィプス三姉弟が弾丸のように飛び出し、ウノが高速回転でサイクロプスの頭を業火で巻き、それを嫌がって手で払おうとしたその腕をボマーのドスが爆破。サラマンダーのトレスはブレスで腹に大穴を開けた。
そこにしーちゃんの凍結魔法が吹き荒れ、凍ったサイクロプスの足をガチャ丸が粉砕するが、サイクロプスの再生速度の方がまだ上回っている。
しばらくその様子を呆然と眺めていたアンジーさん達も
「私たちもそろそろ活躍しよう。ノエルにばかり負担をかけたら冒険者の名折れだ」
と、サイクロプスに鋭い視線を向け、剣を構えた。
私も二射目の弓を引き絞ったその時、
「ノエル~お・ひ・さ~、派手にやってんね~。モンスちゃん達めちゃ強じゃ~ん」
「………。」
なんとも気の抜けた声が空から降ってきた。
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明日のエピソードは「第4話◆オーダーは古き良き和朝食」です。
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