第2話◆あのイベント
「あ、アンジーさん!いつもありがとうございます」
アンジーさんはうちのお店の常連さんで艶々の赤い髪が特徴的なキリリとしたお顔立ちのソロの女性冒険者さん。
聞くところによるとすっごい有名なんだって!
っていうのを、いつもバスクオスカ平原に向かう前にうちに立ち寄ってくれる新人冒険者チームの子達から教えてもらった。
アンジーさんを見るその子たちの目がヒーローを前にした子供みたいにキラッキラしてたよ。
なんでも“ストームウォーカー”っていうカッコいい二つ名まで持っているそうで、きっと運動神経良いんだろうね。
私はハーフエルフの弓補正を使ってもレベルカンストまで5年かかった筋金入りの運動音痴だから羨ましいよ。
でね、相棒の飛翔猫クィール君といつも一緒に行動してるの。
どっしりとした丸い大きなクリームパンの手足にライトグレーのふわふわもこもこの毛皮。特徴的な丸みのあるお耳にアメジストのように美しい瞳。
見た目がまんま“マヌルネコ”!!!しかも虎サイズ!!!
眼福です。ありがとうございます。
そんな二人の戦場は飛翔猫固有のスキル“ストーム”と、アンジーさんの風魔法が合わさって暴風吹き荒れるんだとか。
あー、だから“ストームウォーカー”なのね。カッコいい!
そんなのんびりとした昼下がり、平穏な日常を破ったのは遠くから聞こえる魔物の咆哮とけたたましく開いた店の扉だった。
「フィオの森に
入ってくるなり息を切らしながらその知らせを持ってきたのはいつもの新人冒険者チームのリーダー“エドくん”。
「少年!それは本当か!?」
すぐさま反応したアンジーさんが顔色を変えて問う。
「本当だよ、俺、この目で呪穴が開く瞬間見たんだ!魔物が溢れ出てきて必死で逃げたけど、やたらと足の速い猿みたいなのに追っかけられて引き剝がすのにすごく苦労した」
「そうか。私はフィオの森を確認してくるから、お前たちもノエルもすぐ王都に避難するんだ。いいな!」
強い口調で念を押し、アンジーさんはクィールに跨り颯爽と飛び立って行った。
新人君達は当然私を気遣って避難をすすめるけれど、私は今起こっている事に心当たりがある。
VRMMO「女神の箱庭」のゲーム時間内で1年目の春。
ようやく農場で複数種類の野菜や薬草や果物を育てられるようになったそんな頃、春の連休に向けて大型イベントのアナウンスがあったのだ。
【レイドクエスト:スタンピードを止めろ!王都防衛、バスクオスカ平原の戦い】
バスクオスカ平原のその先のフィオの森に開いた
まさかゲームと同じことが起こるなんて…。
以前このイベントに参加した時の私は1年目のひよっこ弓士だったけど、今なら十分に通用するはず。
だから、私は戦う。農場のために。
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≪100話まで毎日更新中≫
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明日のエピソードは「第3話◆私の家族」です。
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