第27話 修羅場


カラオケでしばらく楽しんだ後、どこに行くかという話になり、都合良く両親が出張に行っていて家にいなかったため、俺の家に行くこととなった。


「裕司君、ご両親は今家にいないだ、言ってたけど、兄弟とかはいないの?」


家に向かっている途中、由香さんが、俺に聞いてきた。


「兄弟ですか?あー、1人、いますね。妹が。」


「今は家にいないの?」


「あいつは、悔しいことに彼氏持ちなので、今はデートに行っているんですよ。帰ってくるとしても、夕方ぐらいになると思います。」


「へぇー。彼氏持ちなんだあ。裕司君は彼女いないの?1人や2人、いそうだけど。」


優里さんがとんでもないことを聞いてきた。


「彼女なんて、いませんよ。欲しいとは思ってますけど、俺なんか。」


「ふーん。私が立候補してもいいかな?」


「なっ。」


優里さんがとんでもないことを言ったが、そこに由香さんが何故かキレた。


「おい優里、そんなこと私が許す訳ないだろ。裕司君はな・・・」


由香さんは、何かを言いかけて、言葉を飲み込んだ。


「んー?由香ちゃん、裕司君がなんだって?ほら、早く言いなよ。」


「あーもうっ、うるさい!あんたは少し黙ってて!」


そう言い放った後、由香さんは拗ねてそっぽを向いてしまった。


何でキレてるのかはよくわからないが、流石にこれは優里さんが酷いと思ったので、由香さんの近くに寄って慰めた。


「由香さん大丈夫ですか?優里さん、ちょっとそれは揶揄いすぎだと思います。ほら、謝ってください。」


優里さんは言いすぎたと思ったのか、謝ろうとしたが、何が琴線に触れたのか、由香さんが泣き出してしまった。


「これは、みっともないな。」


「何がですか?」


これまで傍観していた稲荷さんがボソッと呟いた。聞き逃したりはしなかったので、問い詰めるが、それ以上は黙って教えてくれなかった。


しばらくすると、目的地に到着した。その時には由香さんは泣き止んでいたが、雰囲気は最悪だった。


「ただいまー。」


「おかえりー。」


誰もいないはずだったが、挨拶が帰ってきた。

妹の声だ。何でいるんだろう。


「ちょっと話してくるので、玄関で待っててもらえますか?」


「いいわよ。由香ちゃんと稲荷もいいわよね?」


優里さんが問いかけて、2人ともこくりと頷いた。


「お兄ちゃん?どうしたの?」


さっきので俺が帰ってきたことを確信したようで、妹がリビングから玄関まで歩いてきた。


「沙織、何でいるんだ?デートしてるんじゃなかったのか?」


「デート?ああ。ちょっと嫌なことがあってね。帰ってきちゃった。ところで、そこの人たちは誰?お兄ちゃんの彼女たち?」


「俺に彼女ができないことをネタにするな。わかっていて聞いてるだろ。この人たちはだな、まあ、ゲームの仲間みたいな感じかな?」


「何でそこが曖昧なのよ。」


何とか誤魔化して、由香さんたちを家にあげた。

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