第28話 無人
有人機のFG15は、無人機の異常な機動性に劣勢を強いられていた。
「きつい、意識が飛びそうだ…ヴァルキリー、対空ミサイルでもいい、援護できないか」
「もう少し耐えてくれ!いま増援を上げている!」
しばらくすると、無人機は交戦距離を伸ばしていき、まるで撤退しているような動きをみせた。
「なんだ?燃料切れか?」
「ECM!ECMです!」
※ ECM (electronic counter measure) 妨害装置
「どこに居る!」
「艦隊の真上です!無人妨害機の様です!」
「くそ!油断した!あの基地の本命は爆撃機なのか!?」
「しかしなぜ今それを使うんだ」
「おい…嘘だろ…」
《撃て》
それまで背を向けていた無人機は、反転を開始、ウェポンベイを開放しミサイルを発射、それに合わせてマンタレイも無数のミサイルを発射した。
「発射を確認、命中後、無人機の収容作業を開始します」
「なんで数だ!チャフだ!チャフを散布しろ!」
ヴァルキリーのレーダーにはおびただしい数のミサイル反応があったが、ECMの影響で正確な数字が出せなかった。
「制空部隊がやられるぞ!なんとしても撃ち落とせ!」
「ミサイル、こちらにも向かってきています!数は不明!」
「ECMの影響で、ミサイルがロック出来ません!」
「IRで撃てないか!?対空砲は手動制御に切り替えろ!」
※ IR (Infrared )赤外線
「数が多すぎて、シーカーが混乱しています!」
「各艦!チャフランチャーを発射!対空機関砲撃て!」
チャフランチャーはミサイルの手前で爆発、数百発は制御不能に陥ったが、残りはまだ誘導を続けていた。
「ぐぁぁ!当たれぇぇ!」
人間の能力では揺れる船の上から、ミサイルを撃ち落とすなど、ほぼ無理な状態だった。
「ダメです!ミサイルおよそ3〜400は健在しています!」
「総員!対ショック姿勢!甲板作業員は艦内へ急げ!」
「セト隊長!あれを!」
「ヴァルキリーが!行かなきゃ!」
アキは、ヴァルキリーの方へ足を動かした。
「待て!あれは俺らではどうにも出来ん!」
「見殺しにするのですか!?」
「今はヴァルキリーを信じて、地上部隊を死守しろ!」
第303技術戦闘隊及び地上部隊の前には、GMF-29NKが暴れ散らかしていた。ミサイル群は第6・8・9艦隊に命中、一時的に通信が途絶した。
「痛ぇな…損害は!」
「第4ブロックから第8ブロックに火災発生、隔壁D1〜G20までを閉鎖しました!」
「艦隊の状況は」
「レーダーから確認出来ているのは、轟沈3、大破12、中破2、小破35、損害無し75です。現在妨害電波及び通信が途絶えているので正確な数字ではありません」
「全然マシだな…」
「メルキセデク及びデュランダル改も被弾しましたが、損害軽微です」
「よし、状況回復次第、反転攻撃を開始する。無線をオサムに飛ばしてくれ」
オサムは、艦隊上空の無人妨害機を狙撃しようとしていた。
「オサム、ヴァルキリーの上に円盤のついた無人機が居る」
「丁度狙ってますよ!」
150mm対物徹甲ライフルを発射、一発で命中し、無人妨害機は粉々に砕け散った。
「ひゅーいいねぇ、ざまぁみろだ」
「流石だな…」
「ホンダ艦長、まもなくギャラルホルンが到着するわ」
「やっとか…」
--山川重工業本社
「AF-62AI発進準備!」
「管制を第9艦隊のナナセ大尉へ回せ!」
山川重工の滑走路に現れたのは、C117多目的輸送機とAF-62AIと書かれた機体だった。
「遂に無人か、早いもんだ、まだ開戦して一年も経ってないんじゃないか?」
「そんなもんさ、だがこいつには反対だな」
「稼働実験中に暴走したんだよな」
「所詮はAIさ」
『AF-62AI、シーケンスクリア!まもなく発進します!』
「ゲート開け!カタパルト接続!」
『カタパルト発射!AF-62AI発進!』
AF-62AIは多目的輸送機C117に接続、白煙を吹き散らしながら加速していきその場を後にした。
「所詮機械、良くも悪くも、人の感情なんて物は分からない、嫌な時代だ」
--メイフライ基地周辺
「また撃ってくるぞ!戦車は!?」
「待ってくれ!再装填中だ!」
「アーマーフレームで揺動するぞ!」
小型AFと大型AF、その光景はまるでマンガの世界に入っているようだった。
「昔こんな漫画あったよな!アキ!」
「あぁ!今は俺たちがヒーローだ!」
妨害機は破壊され、無人機の回収を完了したマンタレイは上空からの偵察活動に専念していた。
「さすが第6、結構しぶといな」
「爆弾はまだありますが、どうしましょう」
「一回戻るぞ、キラーホエールと合流しよう」
「敵大型爆撃機が反転!退却していきます!」
「安心するのはまだ早い!次だ!あのデカブツを排除する!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます