第24話 誰にも好かれるから、私にも好かれる
中学3年の頃、憧れていたクラスの女の子を思い出していた。男女関係なく、みんなの人気者で――、端っこでひとりずっと机に向かっていた私なんかにも時々話しかけてくれていた。
コミュ障で陰キャの私なんかを気遣ってくれている時点で気付くべきだった。彼女にはそれができるだけの「人間性」があって、だから人気者になれるんだ。
そして、人に優しくされ慣れていない私は、そんな人にすぐ好意を向けてしまうんだ。
今もそれと一緒。ミズキさんはとても魅力ある人で、きっと私が知らないところでいろんな人に好意をもたれているんだろう。
そこにたまたま私も混ざって、偶然がもたらした幸運からミズキさんの「友達」になれた。
同級生にすら友達と呼べる子がいない私にとって、それはとてもとても特別な存在だけど――、ミズキさんにとっては特別でもなんでもないんだ。
あの日は結局、単4電池を買わずに家へと帰った。
私の感情は「陽」より圧倒的に「陰」が強い。良いことを塗りつぶすネガティブな想像力なら同学年でも屈指ではなかろうか?
陰と陽の変化は、それこそジェットコースター並みなのに、それに反して心が欲しているのは平穏であって、平坦なのだ。
わかっている。この悪い考えは、一種の防衛本能だ。
期待をして裏切られた時、うまくいかなかった時、高いところから一気に下へ落とされた際のダメージに耐えきる防御力もHPを兼ね備えていない。
だから、最初から、落ちる前提で身構えているのだ。最悪、落下しても受け身をとれる高さまでしか登らない。これはもう意識的にやってるわけじゃない。本能ゆえにコントロールできず、それでいて事実、私はこれに救われてきた――、ような気もする。
◇◇◇
「ミラミス」展示イベントに出掛ける日、私は鈍い痛みを頭に感じながら起床した。カーテンを開けなくても、スマホを見なくても、空が晴れていないことだけはわかる。
気圧の変化を「頭痛」が知らせてくれるのだ。案の定、カーテンの隙間から外を覗き見てみると、しとしとと粒の細かい雨が降っていた。
空は曇天、私の心境を表しているかのようだ。本当なら跳び上がるほど喜んで、「サワジリケツオ」の真似をしていてもおかしくないはずなのに……。
冴えない表情の自分と睨めっこをしながら櫛で髪を解かす。私の頭は中身だけでなく、外側までも気圧に反応する。元々、くせ毛の髪はいつも以上にそのクセが激しくなっていた。
『展示は屋内だし――、天気なんて関係ない』
せっかく行きたかったイベントに、それも憧れのミズキさんと一緒に行けるのに乗り気になれないなんて……。こんなことならリモコンの電池なんて放っておけばよかった(結局、買ってないけど)。
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