第2話 転生先の魔王
「ん?生きてる?いや、そんなはずは…」
【ポーン】
「ん?なにあ頭の中に音が響いた…?」
全くもって不思議な感覚だ。水に沈んでいるような、でも周りは真っ暗で、でも自分の身体は見えていて…もう訳がわからなくなりそうだ。
【こんにちは。死後カスタマーセンターのものです】
「だっ、誰だ?俺は何故ここにいる?俺は死んだはずじゃ…?」
【あなたは死亡いたしました。ですがそれはこちらの不手際によるものでして、そのお詫びとして、異世界へと転生させていただきます】
「は?転生?なんだそれ?美味いのか?」
【…】
「ごめんって冗談だから。続けてくださいって」
【…日本人なら皆知っていると思い込んでいました。転生というのは、生前の記憶を保ったまま、別の世界へと行く事を主に指します。あなたは本来死なないはずのところで死んでしまった。それは神々及び我々死後カスタマーセンターの重大的な問題なのです。したがって、あなたの望むまま、あなたの理想の地へと召喚いたします】
「正直寿司があればどこでも…いや、元の世界。元々俺が住んでいた世界には帰れないのか?」
【申し訳ございません。そちらは神々の更に上層部の関係上、する事ができません。万が一戻ったとしても、肉体の破損が大きいため、すぐに命を落とす事になるでしょう】
「…そうか。まあ伝えたい事は全て伝えたんだ。カッコつけて元いた世界は去らせて頂こうかな。」
【ご理解ありがとうございます】
「じゃあ…といっても、理想は特にないんだよな…。それこそこの意識のままとなると、寿司がある世界くらいしか望まないな」
【承知致しました。では早速、あなたの転生する世界の抽選を始めようと思います】
「ああ、頼むよ」
【転生可能世界約9億5000万のうち、寿司及び寿司の制作可能な世界、300】
「うそだろ?そんなに少ないのか?」
【米という植物の関係でございます】
「ああそっか…なるほどね…」
【最も上質な寿司が作れる世界ほぼ等しく2】
「おお、もうそこまで絞られたのか。凄いな」
【選択肢を2つに絞りました。次の2つの内、片方の世界を選んでください。今後の変更は受け付けられませんので、慎重にお選びください】
「なになに?」
『第2億9005万世界・フラマージュ
主な生物:人間
主な米:インディカ米
主な食料:小麦
主な
「いや主な主なうるさーい!」
【…】
「あとカスタマーセンター?さんさぁ、さっき上質な寿司が作れる世界とか言ってたけど、ここの主な米ってインディカ米じゃないか!あれはパサパサでチャーハンとかには向いてるけど、寿司には合わないんだよ!寿司にする米はジャポニカ米と言ってね、ふっくらもちもちしているんだ!」
【それでしたら、もう片方の世界をお選びしますか?】
「ああもうそっちでいいよ!ジャポニカ米はあるんだろうな?」
【はい】
「なら尚更こっちだよ!…と、興奮してしまった。すまない。で、その世界は何て言うんだ?」
【ダフォンタリアです】
「よし決めた。ダフォンタリアで決定だ。早く連れて行ってくれ」
【承知致しました】
「ふぅ、やっと一息つけるよ…」
【それから、この声は異世界では届きませんので、ご了承ください】
「ああ、わかったよ」
【それでは、目を閉じてください】
「はいはい…」
なんだかコンピューターてきなテロテロテロといった音が聞こえ始めるが、それも次第に遠く感じられてゆく。
~神々が住む天界にて~
「それにしても、ダフォンタリアを選んでしまうとはな」
「ああ。我々も神々として、あそこだけはやめとけと忠告すべきだったが…もう遅いか」
「まあ仕方ない。我々の加護を与えようか。あの者には可哀想だが、あの世界で生き延びてもらおう」
「ああ」
『第3の世界・ダフォンタリア
主な生物:亜人及び人間
主な米:ジャポニカ米
主な食料:地方による
主な脅威:魔王』
「うおっ、ここは?」
ふと目を開けると、荒れ果てた荒野にいた。空は曇り、周りにまともな植物は見当たらない。
「寿司作れんのか?こんなところで。いや違うな。もっと遠くにあるに違いないな。そうと決まれば早速、少々冒険しますか…」
とりあえず北に向かう。ここら一帯は乾いている、地球で言う乾燥帯みたいなものだ。ということは、北へと行けば地球で言う温帯へと着くんじゃないか?そんな考えのもと、行動を開始した。
「まあここに居ても仕方ないしな」
そして歩き出した。うっすら見える太陽が丁度南中したと思われる、その瞬間を狙い、太陽とは真逆の方向に進み出した。
~4時間後~
「はぁ…はぁ…おかしいぞ…?」
いくら歩いても一向に水や食料の気配がない。
まさかとは思うが、カスタマーセンターに騙された…?
安易な憶測ではない。間違えた殺し方しちゃったから別の世界に連れて行って勝手に暑くて死んだという方が色々と辻褄が合うんじゃないか?…いや、まさかなぁ…?
「もうちょい歩くか…」
~2時間後~
「いや、あったにはあったけども…」
そこにあったのは若干紫がかった黒雲とでかい城。
え、いや、え?でかい城?
「なんでこんな所に城なんかがあるん
「貴様?ここで何をしている?」
「!?」
突如後ろから声を掛けられる。
「聞いているのだ。貴様はここで何をしているのだ?」
「えっと、え?」
「ハッキリと応えろぉ!!」
「えーっと、率直に言うと、迷いました」
「ほう?迷って我が城へ?それはなんとも、なんとも面白い偶然であるな?」
なんだこの男。白くて長い髪の毛。190cmほどありそうな高身長。そしてイケメン。俺の勝てる要素どこ…。
「でも事実こうして迷っている訳ですし…」
「…ふっ」
「?」
「ハッハッハ!!面白い!我を見ても尚、その態度で?その発言か!ハハハハハ!いいだろう、貴様を我が城へ招待してやろうではないか!」
「え?我が城って、あれ?あのクソでかい?」
「ああ!」
なんなんだコイツホントに…?いきなり会って何してるか聞いたかと思えばお家に招待?頭おかしいんじゃないか?
「そうだ、貴様の名を聞こうか!」
「俺の名前?俺は佐藤 簀巻だ」
「サトウ スマキ?そうか!スマキか!」
「そうかって…あなたの名前は?」
「我の名は魔王・グレスティーアだ!よろしく頼むぞ!」
「あ、ああ」
そして俺は自称魔王と一緒に、そいつの城へと向かった。
「うわっ、汚な!?」
入口から入った途端に大量のゴミが投げ捨てられていた。
「わざわざ捨てるのも面倒であろう?」
「いやいや、いちいち捨てる癖をつけなさいよ…」
そんな会話をしつつ、魔王について行く。
「ふむ、貴様は、やはり我を怖がらないのだな」
「え?なにが?白い髪の毛のことか?そんなんへっちゃらさ」
「そんなことでは無い。我は魔王なのだぞ?」
「うん。で?」
「で…とは?」
「いや別に、言うてあんた悪い奴では無さそうじゃないか。もっとヤバいやつは目の奥がこう、ドブみたいなんだよ」
「なっ、スマキ…」
「例えるならそう…お前の城の中みたいな」
「なんだとぉって反撃できないの我悔しい」
「まあそんなとこだな。で、俺を城に連れてきた訳は?」
「おっとそうだったな。我はこの通り掃除が出来ない。だから掃除係として、貴様を採用しようと思ったのだ」
「雑用かよ…」
「まあそんなところだ」
「でも俺はどっちかというと料理の方が得意だが?」
「ほう?言うでは無いか?なら貴様!ステータスを見せてみろ!」
「ステータス?なんだそれは?」
「なっ、ステータスを知らない?貴様、怖いもの知らずじゃなく、ただの常識知らずか?…まあいい。ステータスと唱えてみろ。そうすると自分の目の前に画面が表示されるはずだ。そこには貴様の情報や能力が載ってある」
「へー。やってみるか。」
《ステータス》
ブォン
「うおっ、なんか青いのが出てきたぞ」
「そこに書いてある数字などを着目してみろ。様々な能力値であろう?」
本当だ。よく見ると沢山数字が書いてあるぞ?
「なっ…なんだ?この数値…?」
サトウ スマキ
HP:591223/591267
MP:€\%^\\〆~&*$**
攻撃値:964102
防御値:1205332
俊敏値:9058
クリティカル率:15%
器用値:9999999999999999
「おお、なんかいっぱい数値書いてあるな」
「何なのだ貴様は!?」
「うおっ、なんだいきなり」
「この数値だ!絶対におかしい!いや、ほとんどは我の方が高いのだが…」
「え?」
「え?じゃないぞ!?なんだ約1京って!?この世界のカンストに到達しているというのか!?」
「ちょっとついていけてないよおじさん…」
「MP何これ!?文字化けか?恐ろしすぎるだろ!」
「え、あ、確かに」
「そしてこのジョブ!見たことないわ!!」
「ジョブ?職業ってことか?」
おっと。サラリーマンだったから今世もサラリーマンになっていると予想したのだが。これは運命と捉えて良いのだろうか?
ジョブ:寿司職人
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