第47話
自分で答を出して、泣いて泣いて吐き出して、お相撲さんも驚く程たんまり食べて、たっぷり寝て、私は雪野美月を卒業した。
その春休みは毎日のようにチカと会って遊び歩いた。
勿論雪野先輩のことも詳しく話した。
話した後チカは暫く無口だったが
「ジャジャーン!今年アイラはどんな恋をするでしょうか?!
私の王子様は現れるかな?!
楽しみ〜!」
と言ってわざとふざけた。
チカの気持ちは嬉しかったが、私はまだ恋の病み上がり。
「チカ………
やっぱ私、まだ雪野先輩が好き………」
また涙が溢れた。
「良いよ! 気が済むまで泣いて良いから」
チカは私の肩を抱いてくれた。
私が声を出さずにしゃくりあげている間、チカは私の老婆のような手をとり、そっと撫で続けていた。
私が落ち着いた頃チカは呟いた。
「今年も同じクラスになれば良いね………」
新学期が始まった。
始業式の日はクラス替えの表示を見ることから始まる。
チカとは別のクラスだった。
しかも私のクラスは一クラスだけ孤島のように離れた場所に有る音楽室として使われていた教室なので、昇降口も別々になる。
私がガッカリしていると、チカが真顔で私の所にやって来て
「別々になったね………」
と溜め息をついた。
「部活が一緒で良かった………」
私は本当にそう思った。
チカのような友達が、そうそう出来るとは思えない。
「そうだね!ほんと良かった」
「じゃ、部活でね!」
それぞれ新しい教室と新しい仲間の中に入って行った。
「アイラ、大丈夫だからね! 心配無いよ!」
と、教室に足を踏み入れた途端ピーターが言い出した。
その理由がすぐに分かった。
あの『気持ち悪い』と言った男子が同じクラスだったのだ。
他にも知ってる顔は居るが仲良くしていた顔は全く居ない。
私の中でプスーと魂が縮んでいくのを感じた。
まるで風船から空気が抜けていくように。
周囲の世界と私を隔てる何かがどんどん巣食っていく感覚だった。
私は水の底から、ゆらゆら揺れる影のような外の世界を眺めているようだった。
クラスメイトと顔を合わせるのも怠く感じられる。
初めての感覚だ。
つづく
挿し絵です↓
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