第15話
私は小学生になった。
新一年生を迎える上級生がもの凄く大人に見えた。
私は相変わらず猿だったし、相変わらず包帯小僧だった。
幼稚園には無かった鉄棒が珍しくて夢中になった。
上級生のお兄ちゃんお姉ちゃんを真似て逆上がりもすぐ出来るようになった。
猿なので駆けっこも速かった。
全般的に運動は得意だったから、昼休みもグラウンドや体育館で動き回っていた。
お陰で包帯は汚れが酷く、毎日換えを用意していた。
その頃には自分で包帯を巻けるようになっていた。
指一本一本に巻く時や手首に固定する時は、途中一度折ってその部分を細くした後裏側で巻くようにすると外れ難いことも分かっていたので、大人が巻くより上手に巻けた。
下手な巻き方だと、すぐ外れてくる。
猿にはそれがウザい。
だから馴れない大人にやられるより自分でやる方が都合良く出来る。
「包帯巻くの上手だねぇ」
とよく言われた。
猿は、
ーーーーー毎日やってんだから当たり前じゃん!ーーーーー
と内心思っていた。
だが、得意でもあった。
今、包帯巻きに馴れてしまった💦幼い自分を思い返すと苦笑するが、もし幼い私に会えるなら「頑張ってるね!」と褒めてやりたい。
新しい包帯に換えて、汚れた包帯は新品の物と同じように端からクルクル巻きにする。
そうすれば散らかさずに持ち帰れる。
それをママが洗濯してくれて、干して乾かした包帯はママと私、時々パパの皆でクルクル巻きにする。
そうやってボロボロになる迄何度か使い回した。
包帯に関しては、職人のように手際良くこなすことが出来るようになっていた。
『小さい私よ! ご苦労さん!』
小学生になると言葉も達者になりピーターともよく話すようになった。
ピーターは洋服やランドセルのポケットに入っていたり、あちこちに座っていたり、燕みたいに飛んだりしながらいつも私と一緒に居た。
包帯クルクル巻きの時は、包帯がピーターの長い滑り台になった。
その頃、我が家の隣りに赤ちゃんが生まれた。
私はオバさんのお腹に赤ちゃんが居ると聞かされた時、星になった赤ちゃんのことを考えると実感が湧かなかった。
だからその事は考えないことにしていた。
しかし、赤ちゃんは何事も無く産まれた!
男の子だった。
私は急に実感が湧いた。
実感するのを許されたような気持ちだった。
ママも可愛がった。
私は暫く弟のように隣りの赤ちゃんを面倒見ることに夢中だった。
つづく
挿し絵です↓
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます