第33話 アサヤケ公園の支配者格魔物
アサヤケ公園・ダンジョン中央付近。
支配者格魔物は遊具に囲まれた場所に佇んでいた。
顧問の矢那馬先生よりもあの魔物は大きかった。
それでいて、肩の辺りまで髪が届く真白よりも遥かに髪が長く、地面にまで垂れ下がっていた。
全身が泥で構成されている泥人形のようだ。
昨日から僕が相対していたレベル四ドロノビルのレベル五、個体。支配者格ドロノビルということだろう。
「ここから見ると、本当に凄いですね、あれ……」
湖身が完全にびびっていた。
支配者格魔物にではなく、ここから少し離れた場所に見えているサンゲキガレキ廃村の方を見てだ。
朝焼け空を呑み込むような悍ましい血の色の空がサンゲキガレキ廃村の上空を覆い隠している。
その空に向かって、地上から紅色の巨大な瓦礫群が背比べをするように乱雑と転がっている。
「サンゲキガレキ廃村は無数の瓦礫が迷路を作ってるダンジョンで、一度入っちゃうと、出る時大変なんだって」
真白が言った。
「そうなんだ……」
湖身は呆然と眺めている。
「あっちのことはどうでもいいんだよ! 俺たちが戦うのはこっちだろうが!」
不治野が支配者格魔物へと注意を向けた。
「まずは僕が先に突っ込む。数分くらいの間タイマンをさせてほしい。敵がどんな攻撃をしかけてくるのか、この目でよく見ておきたいからね」
言いながら僕は真白を見下ろす。
「僕が合図を出してからが君の出番だ」
真白が見上げ返してくる。
「単独で僕が戦ってる間、君はすぐ近くで待機しておくといいよ」
「支配者格魔物の動きを観察しておくようにってことですか?」
不治野の不機嫌そうな声色が響く。
「……てめえが指示出してんじゃねえよ、ったく、これを持っていきやがれ、二位之!」
笛を投げ渡してくる。
「……これは、君が所持しておくべきじゃないかな?」
「当然、俺様もまだ持ってるっての!」
不治野は別の笛を取り出した。
「いざという時、それで僕へ助けを求めることだね。命が惜しければすぐに泣きついたほうがいいよ?」
「っち、わかってら、そんなことは!」
ダンジョンレベル四・アサヤケ公園の支配者格魔物討伐が始まりを告げる。
「いくぞ! てめえら! 攻略のと――」
不治野の言葉が途中で止まった。
「笛の音……ですかね?」
湖身がつぶやく。
「ただの笛の音じゃねえ! 救援を呼ぶ際に使う奴だ!」
と不治野が険しい顔を浮かべる。
真白が悲鳴を上げる。
「部長! この笛の音、サンゲキガレキ廃村の方から聞こえてきてます!」
「分かってる!」
僕はサンゲキガレキ廃村の方向を見据え、ロングソードに手をかけた。
向こうの空で救援を求める信号弾が昇っていた。
「……来てるけど、どうする不治野?」
「一旦、攻略は中止だ!」
不治野は言った。
「とりあえず、あいつらから話を聞くぞ!」
とサンゲキガレキ廃村から飛び出してきた人影へと目を向けた。
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