012 カレーライス

 夏休みシーズンになるとランチタイムのお客さんもけっこう増えてくる。


「はい、おっぱいカレーお二つでございまぁす」


 私がトレイからテーブルにサーブしたのは夏野菜がふんだんに使われたカレー。ただし、ライスが二つ小さな山のように盛られていて、そこから名前がおっぱいカレーとなっている。ちなみにおっぱいシリーズでオムライスもある。

 もっとも、お客さんは基本的にカレーあるいはオムライスとしかオーダーされないのだが。なお、大盛りになると巨乳カレーとかオムライスとか言われる。……安直なことよ。


「ねぇねぇランちゃん」


 ドリンクのサーブも終えて席を離れようとした私をお客さんが呼び止める。


「ランちゃんってカレーは混ぜて食べる? それともそのまま? 私はけっこう混ぜちゃうんだけどさ。この子は子供っぽいからそれをやめたらって言ってくるのよね」

「ランちゃんからも言ってあげてぇな。流石に出されたカレーをいきなり全部混ぜるのはどうかと思うでしょう?」


 ふむふむと思いながら、混ぜる派のお客さんの横に座る。


「私はドリアにするときとかは先に全部混ぜちゃいますね。普通に食べるときは、一口分のごはんをすくってから、カレーと混ぜますね」

「なるほどねぇ。全部は混ぜないで、食べる分だけ混ぜるのかぁ」

「まぁ、カレーくらい好きな食べ方していいと思いますよ? 特にここのカレーは家庭的なカレーですし」


 シルキストで提供しているカレーは業務用のカレールーでことこと作られた一品で辛さはなく、コクとか香りで食欲を進める代物だ。


「ではごきげんよう」


 そう言って席を離れる。今日のシフトはマカさんメグさんサラさんと私。

 サラさんはお客さんの接待に入ってしまっているので、ホールをマカさんが縦横無尽に大活躍だ。


「ランちゃんこっちバッシングお願い」


 マカさんがお客様をレジに案内しつつ、膳下げの依頼をしてくる。私はすばやく食器類をキッチンに持っていき、代わりに台拭きを持ってテーブルに戻る。テーブルを拭いてメニューブックを所定の位置に戻す。


「マカさんこっちオッケーです!」

「ありがと、次のお客様こちらどうぞ~。サラさん、そろそろお時間です~」

「はーい。また指名してね~」


 サラさんのお客さんがサラさんのおっぱいに頬ずりして別れを惜しんでいる。


「注文いいですかー」

「はーい。今行きますー」


 お客様からオーダーの声かけがあってマカさんがすぐ向かう。ほどなくして、

 


「おっぱいカレーお願いしまーす!」


 キッチンに向けて注文のコールが発せられる。今日ここまでけっこうな数のカレーが注文されている。やはり熱い時期にはカレーが食べたくなるのかなぁ。……でもやっぱりその名前はどうかと思うんだよねえ。まあ、このお店らしいと言えばこのお店らしいのかもしれないけれど。

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