第18話 買い物&衝撃の事実

 放課後、花道達「お笑い5」のメンバー5人は、花道の買い物に付き合うため、彼の自宅近くのスーパーにやって来ていた。


「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」


「……またかよ」


「お前、スーパーでもそのテンションなのか?」


 脇田と藤井が苦笑しながら、目の前の光景を眺める。


 花道はカゴを持ちながら、ひたすら冷凍食品やカップラーメンを次々とぶち込んでいた。しかも、入れるたびに大袈裟な声を上げる。


「うおぉぉぉぉ!! これは安い!! よし、買うぞ!! 」


 ガコンッ!


「おぉぉぉぉ!? このカップラーメン、50円引きだと!? 買うしかねぇ!!」


 ガコンッ!!


「おおぉぉぉぉぉぉぉ!! これは期間限定の冷凍炒飯!! よし、2つ!!」


 ガコンッ! ガコンッ!!


「いやいや、入れすぎだろ!!」


「ていうか、声がデカい!! 店内の人に迷惑掛かるから! 」


 安井と藤井が即座にツッコむ。


「あははっ!! いや〜、これはヤバいって!!」


 脇田は大笑いしながら、隣の紬にも「なあ、三上さんもそう思うよな?」と同意を求めた。


 ——しかし。


「……」


 紬は珍しく全く笑っていなかった。


 それどころか、彼女の表情は真剣そのものだった。


「ダメだよ、森田君!」


 そう言って、紬は花道の腕を掴み、彼の手を止めた。


「え?」


 花道が驚いた顔をする。


 今まで、どんなボケをかましても大笑いしていた紬が、初めて真面目な表情を見せたのだ。


「三上さん、知らないのか?」


 脇田が察したような顔をする。


「知らないって……何を?」


 紬が不思議そうに脇田を見つめると、藤井が少し気まずそうに答えた。


「……森田は、ほぼ1人暮らしなんだよ」


「え?」


 紬が目を丸くする。


「両親が海外にいるんだよな?」


 安井が確認するように言うと、花道は軽く肩をすくめた。


「ああ。父親も母親も、仕事で海外にいるんだよ。俺は中学生の頃からずっとこんな感じだ」


 さらっと言う花道だったが、紬は衝撃を受けたように彼をじっと見つめた。


「……そんなの、ダメだよ!」


 紬は強引に花道の買い物カゴを奪い取る。


「お、おい!?」


 花道が慌てるが、紬は一切容赦しない。


「こんなにインスタント食品ばっかり……ダメだよ! 身体に良いもの食べないと! こんなのばっかり食べてたら、身体壊しちゃうよ!」


 紬は真剣な眼差しでそう言い、カゴに入っていた冷凍食品やカップラーメンを次々と元の場所に戻し始めた。


「お、おいおい!? せっかく安かったのに!!」


 花道は抵抗するが、紬の手際が早く、カップラーメンも冷凍食品もどんどん棚に戻されていく。


「ダメなものはダメ!」


 そう言い切る紬は、まるでお母さんのようだった。


「……おいおい、三上さんがこんなに真剣になるなんて珍しいな」


「いや、なんか新鮮だわ」


 脇田と藤井は感心したように呟く。


「それにしても、森田が、ほぼ一人暮らしって、冷静に考えるとすごいよな」


「ああ。到底1人暮らしができてるレベルでは無いと思うけどね」


 安井と藤井がぼそぼそと話している中、紬は颯爽と先頭を歩き出した。


「私が買うものを決めてあげる!」


「え?」


 花道が驚く間もなく、紬は勢いよく青果コーナーへと向かっていった。


「さあ、野菜をちゃんと摂らないとね!」


「ちょ、おま……!」


 紬の突然の行動に戸惑う花道をよそに、脇田、藤井、安井は微笑ましそうにその光景を見つめていた。


「……これ、森田の食生活、ちょっとは改善されるんじゃね?」


「確かにな。少なくとも、カップラーメン三昧の生活よりはマシになるな」


「三上さん、なかなかやるな……」


 3人は顔を見合わせながら、クスクスと笑っていた。


 こうして、花道の買い物は、まさかの「紬による健康改善計画」へと強制的にシフトしていくこととなるのだった。

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