第15話 移動教室

 チャイムが鳴り響き、教室中の生徒達がざわつき始める。


「よっしゃ、次は移動教室か!」


「次の授業、美術だよな~」


「美術室、3階だったっけ?」


 席替えが終わったばかりの教室では、新しい席の隣同士で話し合いながら、生徒達が次の授業の準備をしていた。


 そんな中、花道は机に突っ伏しながら、ぼそっと呟いた。


「……美術かよ、最悪だ……」


 その呟きを聞いた脇田、藤井、安井が、同時に吹き出した。


「おいおい、またそれかよ! お前、どんだけ美術嫌いなんだよ!」


「まぁ、嫌いなのは分かるけどな。だってお前……壊滅的に絵が下手だもんな!」


「ぶははっ! そうそう! あの時の猫の絵、マジで衝撃だったわ!!」


 安井がそう言うと、藤井も思い出したように腹を抱えて笑い出す。


「そうだ! あれ、猫って言われなかったら絶対分かんなかったよな! なんか生き物……? って感じの、謎の物体だった!」


「うるせぇ! 俺は俺なりに頑張って描いたんだよ!!」


 花道はムッとしながら机をバンッバンッと叩く。しかし、脇田達は容赦なく笑い続けていた。


 すると、そんな騒ぎを聞きつけた紬が、合流するように興味津々な顔で近づいてきた。


「ねえねえ、森田君ってそんなに絵が下手なの?」


「いやもう、下手なんてもんじゃねぇよ! 伝説級のレベルだぜ!」


「ほんとにやばいよ! 見たら爆笑必至のレベル!」


 藤井と安井が大げさにジェスチャーを交えながら説明すると、紬の目がキラキラと輝いた。


「えー! すっごく見てみたい!!」


「もうワクワクしてきた! ねえねえ、今日の美術の時間、森田君の絵をしっかりチェックしていい?」


「おいおい、マジかよ……なんでこんなに楽しそうなんだよ……」


 花道はがっくりと肩を落としながら、苦い顔をする。


「もういいよ! どうせみんな俺の絵をバカにするんだろ!? 散々いじりやがって!!」


「いやいや、いじるっていうか、純粋に楽しみにしてるだけだよ~! 期待は裏切らないだろうし! 」


「あははっ! ほんとほんと! だって絶対面白いでしょ!」


 紬は期待に満ちた笑顔を浮かべながら、軽やかに笑った。


 そんなやり取りをしていると、ふと脇田が思い出したように「あっ」と声を上げる。


「そういや、俺……今日弁当ねぇわ」


「……え? まじ?」


 藤井と安井が驚いた顔で振り向く。


「うん、親が忙しくて作れなかったんだよな~。だから、今日は学食確定だわ」


「……あっ!? 俺も弁当ねぇじゃん!!」


 花道も自分のカバンをガサゴソと探りながら、ようやく気づく。


「そうだ! 今日は近くギリギリに登校したからコンビニで弁当を買ってないわ。てことは、俺も学食行き決定だな!」


「おいおい、大丈夫かよ、お前ら……」


 藤井が呆れたように言うが、そんな中、紬が「ん?」と首をかしげた。


「え? じゃあ、森田君と脇田君は昼休みに学食に行くの?」


「そうなるな!」 


「ま、そういうことだ!」


 花道と脇田が同時に頷くと、紬はニッコリと微笑んだ。


「じゃあ、私も行く!!」


「……へ?」


 花道は一瞬、目を丸くした。


「せっかくだし、森田君達と一緒に食堂で食べるの、楽しそうじゃん! 私は、お弁当を持参してるけどね」


「お、おいおい……」


 脇田が少し戸惑うが、藤井と安井はその様子を見てクスクスと笑っていた。


「ほら、お前らも行くんだぞ!」


 花道が藤井と安井の両者の肩をガシッと掴む。


「……は? いや、俺ら弁当あるし」


「関係ねぇ! お笑い5のメンバーなら、全員で行くのがルールだ!!」


「ルールとか初耳だわ!!!」


 藤井が即ツッコミを入れるが、花道は聞く耳を持たない。


「さぁ、決定だ! お前ら、今日は学食で豪遊だ!」


「いやいや、勝手に決めんな!!」


「もう……まぁ、たまにはいいか……」


 安井と藤井は苦笑しながらも、花道の勢いに押され、しぶしぶ頷いた。


 紬はそんなやり取りを見て、楽しそうに笑っていた。


「わぁ! 楽しみ! 屋上でどんな面白い展開が起こるかな〜」


 紬は目をキラキラさせながら未来に期待する。


「ちょっと話中断した方が良くね?そろそろ教室出ないと」


「そうだな。遅刻の可能性あるしな」


「うん」


 花道達は教科書と筆記用具を確保し、教室を後にし、美術室に向かう。その際、教室の戸を閉める。


 放課後に一緒に帰宅するように談笑しながら向かう。


 こうして、「お笑い5」のメンバーは本日の昼休みを食堂で過ごすことが確定したのだった。

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