寝取られたキミと自分のために生きた俺

けーきまる

寝取られたキミと自分のために生きた俺

第0話

俺は、祈るような気持ちで、仲良さそうに歩く二人の後を追っていた。


そして、見てしまった。


――柚希が、他の男とホテルへと入るところを。


一瞬、時間が止まった。俺の知っている柚希じゃない。信じたかった。ずっと信じていたかった。


だけど、目の前の光景が全てを否定する。胸の奥に冷たい刃が突き刺さるような感覚。息ができない。足元が崩れていく。


(……終わったんだな。)


何かを叫ぶ気力も、問い詰める気力もなかった。ただ、絶望だけがそこにあった。


——けれど。


このまま沈むなんて、冗談じゃない。


「……いや、このままじゃ終われない。」


誰に向けたのか、自分でも分からない。だけど、その瞬間、俺の中で何かが弾けた。


もう、信じるものなんてないのなら——


俺は俺自身のために生きる。裏切られたなら、這い上がってやる。絶望の底から、自分の力で。


俺は静かに、夜の街へと歩き出した。すべてを塗り替えるために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る