.
彼の射抜くような真っ直ぐな眼差しに、私は抵抗する事も忘れ、頬を真っ赤に火照らせながら、だだ、彼を見上げる。
なぜか、じわじわと滲みだす涙に、きゅっと眉を寄せ彼を見つめると、彼も同じく、困った様に眉をひそめながら、優しく口元を緩め、表情を崩す。
「あいしてるよ」
「……っ」
私をまっすぐ見下ろしたまま、彼の口から唐突に発せられたその言葉に息を飲み込む、私。
その直後、すっと身体を寄せ、私の耳元に唇を近付けると、吐き出す息とともに、再度同じ言葉を呟く。
“あいしてる”と……
耳元で響いた声の振動に、反射的に肩をピクリと揺らした私に、敏感に気がついた彼が「ふっ」と息を吹き出す音がして。
そのまま、私の耳元に音を立てて口づけを落とした後、舌先で耳の輪郭をペロリとなぞる。
………っ…!!
咄嗟に体を強ばらせ、あやうく漏れそうになった、甘い悲鳴を、すんでのところで歯を食い縛り飲み込む。
ドクンと大きく音を立てた心臓が、そのまま、小刻みに震えながら、熱を帯びて……
どうしよう。
身体が…熱い……
「ずっと一緒だからね?」
心臓がどくどく暴れて苦し過ぎて、とっさに声がでてこなくて。そのかわりに、涙がぼろぼろと溢れ出す。
私は返事の代わりにコクコクと何度も頷きながら、彼の背中に腕を伸ばしぎゅうっと強くしがみつく。
「……うん、嬉しい」
やっとの事で喉の奥から出てきた言葉は、なんとも率直すぎるシンプルな返答。
嘘偽りない本音とは言え、なんかもう少し、ロマンチックな返しができなかったものかと、割れながら情けなく、思わず苦笑した、その時。
彼が、私の肩にすとんとおでこをのせ、細く長い息を吐きした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます