先輩、守らせてください

春木維兎 -haruki-yuito-

プロローグ

私が恋したのは可憐で美しい女の人だった。


一目惚れした。

彼女は全部を受け入れてくれた。

最初の人だった。

両性愛者。そんな言葉がぴったりだ。

私はこの恋は叶わない。そう思っていた。



「ちっ!多いな…!」

「ぐわあっ!」


周りを囲まれていた私は全員蹴り飛ばし、終わったと安堵のため息をついた。


「わあっ!」


澄んだ声が聞こえた。

まだいたのかっ!そう思い、振り返る。

そこにいたのは、優しそうな可愛い女の人。


「…なんで?なんでこんなとこにいるの」


路地裏の先の方。来る人はほとんどゴツい人。

珍しい。


「大丈夫?顔に傷出来てる。残っちゃうよ?」

「残ってるくらいがちょうどいい」


吐き捨てるように言った。


「だめだよ?そんな事しちゃ。」

「…」


冷たく凍っていた心が温かくなった。


「…名前。」

「ん?私?―――――」


なんて可愛い名前なんだ。

ぴったりだ。

私は思った。


「…じゃあ、」

「えっ?!まって!」


…?

なぜ止めたんだ?


「春雨高校!(はるさめこうこう)1年!」

「は?」


この人の高校?


「?」

戸惑っていると再び声を出した。


「また会おう!あっ!まず、ちゃんと病院行くんだぞ?」


「…はい」


返事をすると、ニカッと笑って


「よろしい!」

そう言った。

その笑顔に。その可憐さに優しさに。

一目惚れをした。


また会おう。か、悪くない。

あの人のためなら勉強、できっかな。

まず、憶えているだろうか。

そんな事も思ったが、必死に勉強して入れた。


そして、あなたに出会った。

思いの外、貴女は忘れていた。

でも、いいの。これから、私を好きにさせてやる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る