ファンタジーな異世界に召喚させられましたが、元の世界の方がだいぶファンタジーだそうです
晴れ時々曇り
プロローグ クラスメイトは異世界に召喚されたことがあるらしい
「異世界へようこそ、勇者様……ここは『魔導大陸ドラゴニア』、我々は今あなた方の力を切に求めています……」
「いせ、かい……?」
「はい、ここはあなた方の世界から見れば別の世界だと、つい先日の神託で告げられました……」
突然の出来事に困惑する少年少女の目の前にひざまずくのは、シスター服を身に纏った少女とそんな少女の後ろに控える十数人の騎士たち。
誰かが呆然と呟いた言葉に答えるように、シスター服の少女が優しい声色で事実を告げた。
「異世界に召喚される」という非常識的な状況。
何故、どうして自分達が……そんな考えが脳を過り、誰かが思わず口を開こうとして――
「なぁ……『
「ざっと数えて10回目ね『
「あ、あはは……二人ともそう気を落とさないでください……書類くらいどうとでも……どう、とでも……」
「『ヴェルト』、それ以上考えるな。
「そこは手伝ってくださいよ『
自分達の近くから声が聞こえてくる。
声の発生源は……召喚された自分達の後ろからだった。
思わず振り向いてみると、そこには頭を抱える体格の良い少年が1人、乾いた笑いを浮かべる少女が2人、そして我関せずと言わんばかりにそっぽを向く一人称が独特な少年が1人。
召喚された少年少女達にとっては見知った顔であり、自身達が召喚される前にいた高校のクラスメイトである。
そんな彼らは異世界に召喚されるという状況においても、困惑していないどころかまるで「うわっ、また面倒な事になった……」というオーラを全身から放っていた。
「あ、あの……勇者様、大丈夫ですか……?」
「ん……? あーごめんね、こっちで勝手に話進めちゃってて。えっと、あなたの名前は?」
「え、あ、『アルテナ』と、申します……」
「アルテナさんね。了解。私の名前は楓。とりあえず話を聞かせて、状況によっては私達以外にも呼ばないといけなくなるから」
「よ、呼ぶ……?」
「今回の相手はどの程度の規模なんだろうな。あ、そうだ。ヴェルトと匠は能力は使えるか?」
「私の方は問題ありません。デバイスも動作します」
「儂も問題なか。しっかし、まぁた鉄を打てなくなるんか……」
「え、ちょ、ちょちょちょ、楓ちゃん達はなんの話してるの!?」
突然知らない場所へと呼び出されたにしては、まるで慣れたかのように事情を聴いていく『楓』と呼ばれた少女。
そして彼女と親しげに話していた『優慈』、『ヴェルト』、『匠』の3人もそれぞれ状況を理解した上で何かしらの行動を始めていた。
そんな4人にクラスメイトの一人が声をあげる。
いくらなんでも話が進み過ぎで、そろそろ説明してくれないと自分達は混乱したままだからだと思ったからだ。
「あー、そろそろ事情を説明しないとダメだね……よし! それじゃみんな驚かないで聞いてね? 今からインパクト大きい話するから」
それに対し、楓は申し訳なさそうに手を合わせた後、咳払いをして言葉を紡いだ。
「――私達は、異世界召喚とかの『特異現象』を対処するための技術を持った組織……の日本支部に所属する『能力者』です!」
「のう、りょく、しゃ……?」
「そうそう。実は私達が住んでる世界って、神様とか妖精とかドラゴンとかがいるような世界と繋がってる神秘的な世界で、それの影響なのか、たまーにそことはまた別の異世界に繋がったりすることもあるんだ。それで今回みたいな異世界召喚とか起きちゃって……」
「ちなみに俺達はなんでかそういう案件に引っかかりやすくて、まだ6月なのに今年入ってすでに10回も異世界に召喚されてるんだよなぁ……」
「この間なんて自室でゆっくりしてたら異世界召喚ですもんね……私達全員が……」
「まったく、面倒なことこの上ない……刀を仕上げ損ねておったぞ……」
遠い目をしながら語る楓につられて、優慈達も遠い目をして乾いた笑みを浮かべて補足する。
彼らの言葉には凄まじい実感がこもっており、冗談といえるような空気ではなかった。
「「「「「「……え、えぇえええええええええええええええええええええええええ!!??」」」」」」
それをきっかけに、先程まで抑えられていた混乱が爆発し、説明を受けたクラスメイト達は大きな声で絶叫するのであった。
――これは地球がファンタジーすぎた結果、一部の者にとって異世界召喚がちょっとした旅行レベルになってしまった世界線の物語である。
ファンタジーな異世界に召喚させられましたが、元の世界の方がだいぶファンタジーだそうです 晴れ時々曇り @SINcloudy
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