41再生【いつだって、わたしを変えてきたのもキミたちだった……】

「最初はね、わたし――ザコ先輩が好きだった。でも、今は、“あなた”が好き。“あなた”のことが心の底から大好き」


 わたしは訴えるように、目の前の女の子に熱い視線を送る。その“硝子玉のように美しい瞳”をじっと見つめて。


「わたしのセカイを変えてくれたのは、いつだってきみたちだった。そして、そんなきみたちが、いつもわたし自身を変えてくれた。でもね、その中でも――“常にわたしを変えてくれた”のは、“あなた”だけ。“あなた”ただひとりが、わたしにずっとずっと“変化”を与え続けてくれたの。ありがとう。一途にわたしのそばにいてくれて、わたしを変わらず“支えて”くれて……」


 わたしの瞳から、一筋の涙が静かに流れ落ちる。




「――ふふっ。大好きだよ、んがちゃん」




 一瞬、言葉が途切れる。


 わたしの愛する人、んがちゃんは、自分の名前を呼ばれたことに驚いたのか、その場にへたり込んでしまう。


「いつまでも、ずっと一緒にいてね。んがちゃん」


 わたしとんがちゃんは、共に大きく泣き笑いを交わし合った。


 ――そして、


「ザコ先輩、ママさん、ごめんなさい。本当に……ごめんなさい……」


 わたしは二人のもとへ歩み寄り、深く頭を下げる。


 そして、顔を両手で覆ったまま、抑えきれずに声を上げて泣いた。


「気になんかしないでよ、バカっ! あんたが悩みに悩んで出した答えでしょ! それなら、頭なんか下げるな! 自分の出した答えに自信を持ちなさい……! そうしないと、あーしとマッちゃんのまっすぐな気持ちが、ぜんぶ無駄になっちゃうじゃないっ……! あーしとマッちゃんは、あんたに誠実に告白した! あんたも誠実に答えを返してくれた! それでいいの! それだけで、もう十分なの! バカぁ……!」


 ザコ先輩は声を震わせて、大きく泣き出してしまう。


「……ママもね、リーネちゃんは、頭を下げる必要なんてないと思うの。だって、それは、リーネちゃんが、ちゃんと自分で考えに考えて出した答えなんだから。でも、でも……! それでもっ……! ママはあなたのことが……! ふぐぅ……っ……ひっく……!」


 ママさんも声を震わせて、大きく泣き出してしまった。


 それから、わずかばかりの時間が過ぎた。


 しばらくすると、ザコ先輩とママさんは、互いに抱き合いながら、お互いの辛い気持ちを吐き出し始めた。


 やがて、ザコ先輩とママさんは、少しずつ落ち着きを取り戻す。


「ふぅー、柄にもなく取り乱しちゃったわ。でも、たくさん泣いたら、なんだかスッキリしたわね」

「うふふふ♡ 右も隣もママも同じ♡」


 つい先ほどまで悲しみに包まれていたザコ先輩とママさんだったが、今はもう、そんな雰囲気は微塵も感じさせない。


「リンネ! がな!」

「は、はいっ!」

「な、なんじゃっ!?」


 急にザコ先輩に名前を呼ばれて、わたしとんがちゃんは思わず驚きの声を上げてしまう。


 そして、そんなわたしたちを見て、ザコ先輩の顔が熟れたリンゴのように真っ赤に染まる。


「幸せになりなさいよ、二人とも。今度こそはすれ違ったりなんかしちゃダメよ」


 その後、ママさんの顔も、ほんのりと桜色に染まる。


「ママたちはね、あなたたち二人の幸せを、ずーっとずーっと、死ぬまで祈ってるわ~♡」


 その言葉が、わたしたちの心に温かく響く。


 わたしとんがちゃんは思わず顔を見合わせ、少し照れくさそうに笑うと――


「「はいっ!!」」


 迷いなく、力強く声を揃えて返事をした。

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