8再生【みゃーこちゃんは死なないわ~♡ママが養うもの~♡】

「ひっく、ひっく……!! ママさぁ~~~~~ん!!」

「あらあら♡ そんなに泣いちゃって、どうしたの~?♡ ママに何でも話していいのよ~?♡」


 突如、泣き声から始まったわたしたちのコラボ配信は、ママさんの「よしよし♡ いいこいいこ♡」に導かれ、一気にカオスの渦へと突入した。


 今日は、はじめてママさんにオギャる覚悟を決めていた。

 そしてこの瞬間、リカママ伝説が幕を開ける。


『ママに頭を撫でられたい』

『我はバブみを感じたい』

『オギャらせてくれ』

『いや、叱られた方がいいだろ』

『それは、お前のヘキだ』

『やっぱりママが一番だよね』

『ママー! ここに変な人たちがいるよぉー!』

『シッ! 見ちゃいけません!』


 コメント欄は阿鼻叫喚、リスナーさんたちのママさん愛が大爆発している。


 実はアノメンで一番人気なのは――そう、ママさんなのだ。

 画面の向こうから狂喜乱舞の雄叫びがこだましている気がする。


「ユー・キャン・ドゥ・イット~♡ ママはいつでもみゃーこちゃんの味方だからね~♡」

「ママぁ~!!」


 そう叫びながら、わたしは甘ったるい猫なで声を響かせた。


「ママはやめてね。マ・マ・さ・ん♡ これは大事なことよ~♡」


 ママさんの穏やかな声に、どこか得体の知れない凄みが宿る。

 その迫力は、んがちゃんの広島弁とはまた違う、本気の怖さだった。


(い、いつものママさんじゃない…!)


 ぞわりと背筋を撫でる悪寒に、思わず身震いする。


「は、はい……。分かりましたぁ……」

「分かれば、よろしい~♡ それで、みゃーこちゃんが泣くなんて一体何があったの~?♡」

「そ、それが、“かくかくしかじか”で……」

「“かくかくしかじか”なのね~♡ それじゃ、仕方ないわね~♡」

「そうなんですよぉ~。本当に“かくかくしかじか”なのですぅ。わたし、どうしたらいいですかぁ……?」

「もう答えは決まってるわよ~♡」

「哀れなグルメワンコを導いてください~。シスター・ママさぁ~ん!」

「うふふ♡ みゃーこちゃんは本当にしょうがない子なんだから~♡」


 コロコロと楽しげに笑うママさん。そして次の瞬間、とびきりのスマイルをわたしに向けた。


「みゃーこちゃんは死なないわ~♡ ママが養うもの~♡」


 “それ、言っちゃダメなヤツ”


 ――とは言えず、わたしは「よろしくお願いします」とだけ答えた。


「パトロンになってくれるってことですよねぇ?」

「うふふ♡」

「ママさん……?」

「女ってね、大好きな人のためなら、時には命も投げ出せるのよ~♡ それは、つまり……♡」

「つまり……?」

「うふふふ♡」

「や、やだなぁ、ママさん、怖いですよぉ。にゃははは……」

「うふふふ♡」

「にゃはははは……♡」


 可愛げを装いながらも、わたしは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。


「いつまでも、ずっと、ずーっと一緒だからね♡ みゃーこちゃん♡」

「は、はい……。って、えっ! ず、ずっとぉ!?」

「ぜ~ったいに逃さないからね~♡」

「…………」

「好き好き大好き♡ みゃーこちゃん♡」


 こうして、リカママは公然と恐ろしい存在になってしまった。


 もしも、わたしが突然姿を消したら――。

 ごはんを食べれているか、食べれていないかの違いはあるかもしれませんが、この配信を見たあなたにお願いがあります。


 どうか、ママさんの“闇”を暴いてください。


 ママさんの瞳の奥には、形容しがたい“真闇”が潜んでいるのです。

 あの暗く澱んだ瞳が――。


 わたしは、怖いのです。とても、とても怖いのです。


「――ねぇ、みゃーこちゃん♡」


 それが、それだけが、わたしの望みです。


 リリカル・リッツ・リリパット・リエンタール・リリム・リジョイス・リン・リ・リラージュ・リンカリンカ.

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