魔人の躍進〜自由を求める少年の生き様〜

玉雫

第一章 家族

第1話 魔人は現れる

 突然だが俺は少しおかしいらしい。どうおかしいって?まず俺には人間と魔族、二つの特徴がある。


 人も魔族も当然だが目は二つだ。ただ、俺の左目からは魔族の特徴である角が側に垂れ下がるように生えている。


 そう左目に生えているのだ。


 普通魔族の角は額に女は一本、男は二本生えるものである。それが男である俺にしかも左目を突き破って一本だけ生えてきやがった。当然見える範囲は狭くなり、さらには常に左目が痛い始末だ。


 さらにもう一つ、俺の左半身は異様に黒い。これも魔族の影響だ。ちなみに右半身は対をなすかのように色素の薄い薄橙色だ。


 なんでこんなことになっているのか。それは全て両親のせいである。


 母が魔族で親父が人間だ。そんな両親ももう死んでいる。母は俺のような奇形を産むことに体が耐えられず死に、十一年間俺を殴り続けていた親父は俺が殴り返してやった。


 この体は便利なことで数発も殴れば人の体はやがて肉になる。


 そう、それが魔族の特徴だ。十一のガキが三○越えの男を殴り殺せるほどの身体能力、これが人間に無くて魔族にある力。


 そしてこんなこともできる。


 目の前に出てきた人なのか獣なのかよくわからない化物、獣人がにより真っ二つに割れた。


 これが魔族に無くて人間にある力。魔法だ。


 この二つの力を魔族と人間の特徴を持つ俺は扱うことができる。


 …おそらくこの力はどちらも純粋な人間と魔族に比べたら中途半端なものだろうがな。


 なんで年端も行かないガキがそんなこと知ってるかって?そりゃあ家にあった本に書いてあったからだ。まあ全部燃やしちまったが。

 

 この湿気った木しか無い森ではいい火種になってくれたぜ。


 クソ親父を殺った後、俺は森に逃げ込んだ。まあ元々隠れ住んでいたから行き場が森しかなかったんだけどな。


 そんなわけでもうかれこれ一ヶ月以上徘徊しているが遂に出口が見つかった。見つかったんだが…


 「———を囲え!絶対に近づけるな!」


 「殺せ殺せ!有金全部奪い取るぞ!」


 人間の群れが争っていた。…群れ?人間は群れでいいのか?まあいいか。


 確か本には通りすがりの冒険者が盗賊に襲われている貴族を助けるんだったか。


 (本当にあるんだな。そんなこと。)


 そう、今目の前では盗賊が貴族(多分)の馬車を襲っていた。


 (それにしてもあの兵士たち随分とゴツイしてんな。あんなの付けてよく戦えるな)


 (そして、通りすがりの冒険者はいねえな…もしかしてそれ…)


 「俺か?」


 冗談じゃない。万が一俺が助けに入って盗賊を皆殺しにしても俺は魔族の血が流れている。その剣先が俺に向くだけだろうな。


 人間と魔族は中が悪い。見つけたらすぐ殺せを両者共に掲げている。


 そんな中子供を産むような関係になった親父たちがおかしいのだ。


 億が一剣先が俺に向かないとしても質問攻めにされて挙げ句の果てに実験動物にされるだろうな。


 …なのに…なのになぜ俺は……


 「オラァ!」


 盗賊の頭を潰しているんだ…

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