第四話 アイドルでカードバトラー!
「
烈火との勝負に負けて、数日が経ったある日の放課後、烈火が俺にチケットを見せながら言った。
「貰えるなら貰うけど・・・・・・いいのか?」
「おう!ホントはママと行く予定だったけど仕事が入っちまったみたいでな!海人は自分でチケット持ってるみたいだし、どうだ?」
「そういうことなら、貰おうかな」
俺が行くことを決めると烈火が手に持ったチケットの内一枚をくれる。
「ほら、コレがチケットだ。それじゃあ今週末な!」
「ああ」
というわけで週末、俺と烈火と海人の3人は武道館へ来ていた。
「でっけー!」
「人が多いね・・・・・・」
「そうだな・・・・・・」
今日のライブは、正確に言うと
どうやら烈火は
よくアサのスピリットワールドニュースのゲストとしても出てくるコンビであり日本だけならトップレベルの知名度のアイドルと言っても過言ではないだろう。
「ぐっ・・・・・・」
武道館というだけで大きい場所にもかかわらず、人が多い・・・・・・!
歩くだけでも人混みを避けるように歩かなければならない。
まだライブまでは時間はあるが外ではツインズスターのグッズや屋台があり大勢の人で賑わっている。俺もグッズを購入しようか検討していたが、さすがにこれだけの人の列には並びたくないので断念する。列の前にいる人たちはどのくらい前から並んでたんですかね・・・・・・?
「俺まだ飯食ってないから屋台でも行こうと思うけど2人はどうする?」
「俺はもう食ったぞ」
「僕も食べたよ」
「そっか」
なんだ、じゃあ俺も食べてくればよかったかな?
「じゃあ、俺はなんか食べてくるから2人はどっか見てくれば?」
「お、それいいな!」
「じゃあ、うちわ買いに行こうよ!うちわのところはそんなに人いなかったし」
「おっけー。じゃあまた後で連絡するわ」
いこうぜ!と海人と一緒にその場を離れていく烈火を見送って、自分は何を食べようか考える。こういう屋台のやきそばとかたこ焼きとかなんでかめっちゃウマいんだよな。お、イカ焼きとか唐揚げもある!迷うな~。まるでテーマパークに来たみたいだぜ。
「たこ焼きにするか・・・・・・」
結局こういうときにたこ焼きの臭いにつられてたこ焼きにしてしまう。
あのソースとマヨネーズが溶け合ったハーモニーみたいな臭いは反則だ。お腹が減っている身体にあの臭いがダイレクトアタックしてくるんだ・・・・・・。
列に並ぶが、たこ焼きはそこまで時間がかかるモノではないので十数分程度で自分の番が来る。
「どちらにしますか?」
「えーっと、・・・・・・ネギたこでお願いします!」
「かしこまりました!」
たこ焼きにはネギが最強。異論は認めよう。
みんな違ってみんな良い。
食べるところができる場所まで移動したこ焼きを口いっぱいに頬張る。
熱々のたこ焼きとソースの味が広がって、無限に食えるぞ!って思えるほどウマいんだよな。
食べ終わった後のたこ焼きを(地味に遠い)ゴミ箱に捨て、これからどうしようかと考える。烈火達と合流するには早い気もするし、ちょっと人混みに酔ったからあんま人がいないところで少し休憩するか・・・・・・。
「お、あそことかよさそうか」
少し歩いたが、良い感じの人のいない場所見つけたぞ。
「きゃあ!」
「うおっ」
目的地に向かってたら角から急に女の子が飛び出してきた。
びっくりしたぁ。今、野生のポ〇モンかってぐらいの飛び出し方だったぞ。
・・・・・・って、え・・・・・・?
「あいたたた」
俺にぶつかった少女が痛そうに尻餅をついたお尻をなでる。
ぶつかったときはフードをしていて顔は見えなかったが、ぶつかったときにフードが脱げてしまったようで顔がはっきりと見える。
「
驚きすぎて声のない声で驚く。
え、なんで!?なんであなたこんなところにいるんですか!?
と、とりあえず起こすか。
「すみません、ぶつかってしまって。大丈夫ですか?」
「あ・・・・・・、いえいえ!すみませんこちらこそ!急いでいたもので!」
引っ張り挙げて身体を起こさせる。
やっぱり
テレビの向こう側にいた人がこんなに近くにいるってなんか感覚がおかしくなってしまいそうだ。
「・・・・・・こんなことを聞いてしまうのは、野暮かもしれませんが。こんなところでどうしたんですか・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・その」
「あ、いえ!言いたくないなら言わなくてもいいんです!もしかしたら力になれることもあるかなって思って」
「・・・人を探しているんです」
「人を?」
誰だ?マネージャーさんとかか?
「あ、すみません。私は
知っています。テレビでよく観てます。
「俺は、
「私の相方の、
「え・・・・・・」
え、いなくなっちゃったのか!?
ライブまでは結構時間はあるが、それは客にとっての話で舞台に立つアイドルならもっと前に集合しなければならないだろう。
「楽屋とかには?」
「もともと一緒に楽屋にいたんですけど、私がお手洗いに行って帰ったときにはもういなくて。結構待ったんですけど、全然帰ってこないんです」
「・・・・・・・・・・・・」
「携帯にも全然出ないし・・・・・。もともと風花ちゃんは天真爛漫というか破天荒というか、ひとつの場所にジッとしていられる子じゃないから抜け出したのかと思ったんです」
小学生なのによく天真爛漫とか破天荒とか知ってるな・・・・・・。
ってそうじゃないだろ。
「じゃあ俺が探すよ。朝比奈さんは楽屋に戻った方がいい」
「え?でも・・・・・・」
「もし五十嵐さんが戻ってきた時、入れ替わりになっちゃうからね」
「でも、私が悪いから・・・・・・」
ん?
「朝比奈さんがお手洗いに行った時にいなくなっちゃったんだろう?朝比奈さんは悪くないと思うけど・・・・・・」
「いえ、違うんです」
「違う?」
何が違うのだろう?
「この前、風花ちゃんと喧嘩しちゃったんです。風花ちゃんはスピードが好きで・・・・・・あ、私もすきなんですけど。でも、風花ちゃんは私よりも全然強くて、よくお忍びで大会とかにもでていて優勝したりしたこともある実力者なんです」
「優勝・・・・・・それはすごい」
俺も優勝経験があるけど、本当に過酷な戦いだ。
特にバレなきゃいいっていう連中が普通にイカサマしてきたりするから対戦相手には細心の注意を払う必要があるし、イカサマやズルをしなくてもそもそも強い人が多いんだ、この世界のカードバトラー達は。
それをアイドルとの二足のわらじでやってんのか
「・・・・・・それでアイドル活動する日をサボっちゃうこともあって、私が『スピードの方がアイドルよりも大切なんでしょ!』って怒っちゃったんです」
「・・・・・・・・・・・・」
「でも、もともと風花ちゃんをアイドルに誘ったのは私なんです。アイドルには憧れてたんですけど、一人でやる勇気がなくて・・・・・。風花ちゃんは、本当はアイドルなんてしたくないんじゃないかって最近は思うんです」
「それは違うよ」
「え?」
それだけは違うと、確信を持てる。
「本当にアイドルをする気が無かったのならこんなに大きな舞台には立つことなんてできないよ。それにテレビで観る五十嵐さんは本当に楽しそうにアイドルをやっている」
「・・・・・・・・・・・・」
「それに、本当にアイドルをする気がないのなら、他にも止める機会はあったはずなんじゃないかな?」
「・・・・・・!」
心当たりがあるのか目を見開く朝比奈さん。
「アイドルも、スピードもどちらも大切だから今でも続けていけてるんだと思うよ」
「・・・・・・そうでしょうか」
「きっとそうさ」
もう結構話し込んじゃったな。
「だから、俺が探しに行くよ。朝比奈さんは楽屋で待ってて」
「・・・はい、ありがとうございます。それであの、これ」
「・・・・・・?」
紙?
「私の連絡先です。もし風花ちゃんが見つかったりしたら連絡ください!」
「・・・・・・!?」
「それでは、あの。失礼しますねっ!」
そう言って来た道を戻っていく朝比奈さん。
え、意図せずアイドルの連絡先が手に入ったんですけど!?そんなことある!?
いや、こんなところで固まっている場合ではない。約束した以上捜しに行かなければ。
それから30分ほどあちこちを探したが一向に見つからなかった。
特徴的だからすぐ見つかると思ったんだがお忍びで大会にも参加しているって言ってたし、変装しているのかもしれない。なんでその事に気がつかなかったんだ?バカか俺は。これじゃあ捜す難易度が一気にあがるぞ・・・・・・!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でしょ?」
「・・・・・・・・・・を」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ばを!」
そうこうしていたら近くから声が聞こえてきた。
この声は烈火の声か・・・・?よく聞こえないが。
烈火の他にも2人の声が聞こえたな。一人は多分海人だろうが、もう一人は誰だ?
女の子っぽい声だったが。
声はたしかこっちの方から聞こえてきたよな。
「・・・・・・あれ」
声が聞こえたところにいったが誰の姿もなかった。
おかしいな、ここのはずなんだが・・・・・・。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あなた達も
「なんでそれを・・・・・・」
「なんでって、おかしなこと聞くのね?私もそうだからよ」
俺と海人の目の前の少女が付けている仮面とフードを取る。
「お前は・・・・・・っ!」
「ええ!
目の前の少女は狐の仮面とフードを被った怪しい謎の人物ではなく、今来ているライブの主役の一人であることに驚きを隠せない烈火と海人。
「『ムー』が教えてくれたの。火の守護龍『クリム』と水の守護龍『リーン』と契約を交わしたカードバトラーが来てるってね。それでいてもたってもいられなくなって抜け出してきちゃった」
えへ、とはにかむ風花。
抜け出すのは悪いことだが、こんな笑顔を見せられると注意する気にもなれない。
天水海人もまた、烈火と同じくはじめと戦った翌日に『水龍王マリーンドラゴン』と契約を結んでいた。
「そういうわけで、どっちか実力をみせてみなさいよ」
「ここは、僕が―――」
「いや、俺がいく」
「・・・・・・烈火くん?」
「ふ~ん?まあいいけど」
それじゃあ、と風花は少し歩いて烈火と距離を取る。
「それで、合い言葉は知っているの?」
「あぁ、一度だけだが行ったことがある」
「烈火くん?何を・・・・・・」
「海人、少し離れてろ」
なるほどね、と何かに納得した様子を見せる風花。
「それじゃあ叫びなさい!あの世界へいくための
「いくぜ!『
「うっ・・・・・・光が・・・・・・!」
光が3人を包み込み姿が消える。
この直後にはじめが到着したが、そこに3人はいなかった。
「ここは・・・・・・・・・・・・?」
海人が目を開くとそこは今までいたばしょではなく広大なフィールドとその両端に立つ風花と烈火の姿があった。海人は空中の観客席のようなところにいる。
「ここは
「ここに来たのは
「私が先行よ。スタートフェイズ―――」
7ターン後、つまり8ターン目の烈火のターンで決着は付いた。
「『レッドトカゲ』で
「ぐっ・・・・・・!ソウルで受けるわよ!」
火龍王クリムゾンドラゴンによって風花のフィールドのブロッカーは破壊され、レッドトカゲの攻撃が風花の最後のソウルを打ち砕いた。
「俺の勝ちだ・・・・・・!」
「ええ。そして私の敗北ね」
決着が付くと、再び光りが3人の身体を包み込む。
そして気がつけば元の場所に戻っていた。
「すごい・・・・・・!」
始めて戦場を見た海人が目をキラキラ輝かせている。
生きているかのように動くスピリットはモニターでも見ることができない。
「そうね、確かにすごいけれど、一般人相手につかっちゃだめよ?」
『そのことについては私があとから海人に話しておこう』
海人の傍のリーン(デフォルメされた姿)が言う。
『俺の勝ちだなムー』
『そうだなクリム。だが次は勝たせてもらうぞ』
クリムゾンドラゴン――クリムと、ストームドラゴン――ムーもまた再戦することを望む。
「楽しかったぜ、五十嵐風花!」
「風花でいいわよ。私も楽しかったわ」
2人が握手を交わす。
「――あ、烈火、海人!こんなところにいたのか!捜したぞ―――。五十嵐風花!?」
「やべっ」
「はじめくん!?」
烈火と海人が慌てるが、はじめが言い終わる前に風花は狐の仮面を付けていた。
「アイドルの風花がこんなところにいるわけないでしょう?人違いよ」
「あー・・・・・・、そっか。それもそうだな」
「それに私も彼女のライブ楽しみにしてるから、もう行くわね!」
それじゃ!と3人を残し走って行く少女。
「はじめ!俺たちもいこうぜ!?ライブが始まっちまう!」
「そ、そうだよ!はじめくん!もう行かないと!」
あんまり遅いと置いてっちまうぞ~!と海人を連れて烈火も会場に向かう。烈火達がいなくなってから、はじめも約束を守るべくスマホを取り出す。
「あー・・・もしもし、井上一ですけど」
「井上くん!風花ちゃんは見つかったの!?」
「ああ、今そっちに向かってるから、もうすぐで着くと思う」
「そっか。よかったあ」
通話越しに安堵したことがわかる。
「それじゃあライブ応援してるぞ。頑張ってな」
「はい!ありがとうございます!このお礼はいつか!」
そう言って通話は切れた。
今日はスピードやってないけど、良い一日だっな。
朝比奈さんと連絡先を交換したことは烈火には黙っていよう。殺されそうだし。
通話が終わったスマホをポケットにしまって俺も今日のライブを楽しみまくるため、烈火たちのあとを追って走り出した。
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