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人がいる。それ自体は別に不思議なことではない。だってこの林は誰の所有地ということもないのだから。もしかしたら誰かの土地ということもあるのかもしれないけど少なくとも僕の友達や周りの大人たちの間にもそういう認識はない。現に色々な人がここを近道として使用している。何度もそういう人を見てきたし、ここを使用しているという話は何度も聞いてきた。
だからこそ、この男はおかしいのだ。
この林は、あくまで近道なのだ。時間短縮のために通るだけの道であるはずなのだ。この場所で何かをするということは基本的にないはずなのだ。何か別の目的でもなければこの場所に滞在する必要性などないはずなのだ。
頭の中でそんなことを考えたことで余計不安な気持ちになる。いや、気のせいだ。きっとこの人もただここを通っていて偶々僕と鉢合わせただけだ。そう思うことにして僕は自宅のある方へ向かい歩を進めた。そして男との距離が段々と近くなり、間もなくすれ違う。ほら、やっぱり何もないじゃないか。考えすぎだな。そう思っていた次の瞬間、僕の耳に男の声が届いた。
「こんにちは、僕。こんな所で何をしているのかな?」
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