第14話
あかりが学校に来なくなってから、とうとう二週間が経ち、三週目の月曜日になっても、やっぱり彼女は学校に姿を見せなかった。
毎日送り続けているメッセージも、相変わらず未読スルー。
昼休み。今日も一人で自分の席でお弁当を食べていると、目の端でクラスメイトの女子生徒が担任の先生に呼び出されたのが見えた。
最近は毎日のように呼び出されている彼女。
名前も覚えてしまった。
山岡さん。
私個人としては彼女に興味が無いけれど、それでも、彼女が私の代わりにあかりの家に行ってると考えると、気になる。
放課後。山岡さんが彼女の仲良い友人に「一緒に帰ろう」と誘われていた。
それを彼女は「ごめん!今日も用事あるから!」と断っていた。
用事って、あかりの家に行くことだ。
胸がモヤモヤする。
一人で家に帰る。
自室で勉強して、最近密かに始めたあかりへの授業ノートもコツコツ作る。
あかり、学校来てない間の授業内容、きっと何も分からないだろうから。あかりが学校に来るその日のために、私なりに分かりやすくポイントをまとめてノートを作成している。
あらかたそれらも終えたら、いよいよ暇になる。
スマホを取り出して、チャットアプリの連絡先相手が『あかり』のトーク履歴を開く。
相変わらず、今日も既読すらつかない。
けれど私は今日あったことを日記をつけるみたいに、メッセージとして記す。
『今日は生物の時間が自習になった。私はなんとも思わなかったけど、クラスメイトのみんなは騒いでた。あかり、自習の時は毎回小説読んでたから、私も今日はあかりが読んでたシリーズを読んでみた。よくわからなかった。お弁当は、あかりが私の手料理の中で特に好きだって言ってたオムレツを作ってみた。あかりが今日学校に来てたら、全部あげたのに、結局一人で全部食べた。自分では美味しいかどうかもわからなかった。―――それと、今日も山岡さんが先生に呼ばれてた。あかり、山岡さんを家に入れてるの?流石に入れてないと思うけど、なんだか、山岡さんがあかりと接してることを考えると、心がモヤモヤする。自分でもどうしてこんなこと考えるのか分からないけど、山岡さんにはもう会わないでほしい』
一通り誤字脱字が無いかを確認して、送信した。
五分くらい同じ画面をジッと見つめて、既読がつかないことを確認するとスマホの電源を落とす。
勉強机の前の椅子に座ったまま、手持ち無沙汰になった右手を部屋着のズボンの中に差し込む。下着の上から、ソコを撫でる。
これは、最近は暇になるとよくやること。
前屈みになって、目を閉じる。
最近はあかりが私の隣にいてくれないから、声も聞けないし身体にも触ってもらえない。
これが、欲求不満?
あかりの声が聞きたい。
あかりに触られたい。
溜まった欲求を、瞼の裏の、前に見た裸姿のあかりに叶えてもらう。
妄想の中で、あかりに沢山「好き」と言わせる。
耳元で囁かれる妄想をすると、下着が濡れ始める。
身体が熱くなる。
右手の動きも自然と、徐々に早くなる。
あかりに抱きしめられる。
あかりに頭を撫でられる。
あかりに私の匂いを嗅がれる。
あかりに「かわいい」と褒められる。
あかりに「好きだよ」と囁かれる。
あかりにくすぐったくてむず痒いほど耳を甘噛みされる。
「あかり。あかり。あかり。あかりっ」
最後に描いた妄想は、いつも裸姿の私とあかりが一寸の隙間も許さないほど密着し、絡み合う構図。
今日もそれで私の身体はビクンと一際大きく跳ねて、果てた。
いつも通り多幸感と睡魔に襲われる。
気持ちよくなった後で、毎回この行いがなんなのか、私は異常なのか、考えてしまう。
調べたくても、なんて調べればいいのか分からない。
今日はもういい。
この後考えよう。明日考えよう。
そうして親と食べる夕飯まで、私は勉強机に突っ伏して眠りにつく。
意識が薄れそうになる中。
ゆったりとした微睡みの中。
ふと、唇に残る感触を思い出す。
ふにっとしたものから、口内を犯されるようなものまで。
記憶にないはずの感覚が、夢と
『さきちゃんは私でオナニーする悪い子なんだ』
『さきちゃんはオナニーって知ってる?』
知らない。
なに、それ。
なに、この記憶。
あかりの手が私のソコに触れて、私の声とは思えない声が出ている。
自分が発したとは思えないけれど、記憶の中の私は、そうなるほど気持ちよくて、下腹部をもっともっとと、あかりの太ももに押しつけて。
たしか、私が見てた変な夢も、こんな感じだったような。
あれは現実のことだった?
それとも変な夢?
ここに来て分からなくなる。
あの時は、意識が覚醒した時にはもうあかりは私に覆い被さるように手をついていて。
そのことに単純に疑問を抱いただけだったけれど。
もしも変な夢が現実のことだったのなら。
私の妄想は、実現可能なこと。
おかしいことでは無いと気づく。
「………んっ」
変な夢のことを思い出したら、眠気と共に再びあのメラメラと燃えるような疼きが、私の身体に宿った。
感情が発情だけというのも、なかなか面倒くさい。
とりあえず私は、もう一度右手をソコに伸ばした。
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