頭の中で広がる世界

 最近、またラジオを聞きはじめた。

 ……といっても、ポッドキャストなのでリアルタイムではなく後追い配信で聞いている。ので、ラジオと言えるのかどうか分からないのだけれども……。


 桜井直子さんとジェーン・スーさんの『となりの雑談』がとても好き。

 特に今回配信された EP.120「旅人よ現在地を知っているか」は、思わず「げげっ、私のことだ……心に刻もう……深く刻もう……」と思う話で、思わずダウンロードをしてお気に入り登録しました(何か目標がある人、こうなりたいという気持ちがある人は一度ぜひ聞いてみてください……)。


 さて、ラジオ。なんとなく、このラジオという世界は小説の世界にも似ていると思っている。なんというか、自分の頭の中で世界がひろがっていくのがとても心地よい。


 ラジオにハマったのは今からうん十年前で確か小学生。

 父がお風呂で聴けるラジオを買ってきた。つるつるで薄い緑色のラジオ。ポケモンの番組を聴いていた。当時からポケモンは子どもの間で大ブーム。ゲームもアニメも誰も彼も見ていて、私もそのうちの一人だった。

 ゲームは姉がやっていた。私は姉がやっているのを横から見ていたり、たまにお手伝いでレベル上げをしていた。


「この草むらでぐるぐる回って。敵が出てきたらAボタン連打な」


 それだけしかさせてもらえなかったのだけれど、それでも普段は触れないゲームボーイを持たせてもらえたのはすごくうれしかったのを覚えている。


 話がそれた。

 ラジオ。そう私は地方に住んでいたので、ポケモンラジオは普通は聞けない地方局。なので電波をひろえる日とひろえない日があった。

 たまたま電波がよくて聞ける日もあれば、まったくひろえない日もあったので、もどかしい。

 ラジオの中でポケモンの鳴き声クイズコーナーがあった。はりきって何でもわかるぞ! と自信満々だったのに、鳴き声がアニメの声じゃなくて「ギュルルルルル」みたいなゲーム音の方だったので、まったくわけがらかなくて悲しくなった記憶。


 それから、少し大きくなれば自分のラジオを手に入れた(カセットテープとラジオが聞けるデッキだった)。夜中に聞いたり、学校が休みの朝に聞いたりして、その音だけの世界に入り込むのが何とも素敵な時間だった。

 歴史時代にタイムスリップをするラジオドラマをたまたま聞いて、その世界にどっぷりハマった。今はあまり無いけれでも、私が学生の頃は「ドラマCD」という文化が盛んで(あと、キャラソンもね)、音を聞いて目を閉じると、もうそこは素敵な世界。

 その歴史ドラマも登場人物がとっても素敵で、メロメロしていたし、今でも現役の「日曜落語~なみはや亭~」も音から見える落語の世界が面白くて大好きだった。


 映像世界も素敵なんだけれども、この頭の中で自分だけの世界が広がる快感はなんとも不思議だ。音だけなのに、色もつくし登場人物の表情や空気がぶわーっと広がる。

 そして、その世界は自分だけのものだという特別感。

 小説もまさにそれで、文字だけなのにどうしてあんなに世界が広がるのだろう。

 その魅力を文字にするのは何とも難しい。


 学校に馴染めなかったとき、そういう世界は私の安全圏だったし、今でも日々救われている。

 今は地方だろうが何だろうかアプリだったりWEBだったりでアーカイブとして聞けるし、便利になった。

 でも、あのリアルタイムでたまたま耳に入ってついつい聴いてしまうという偶然の出会いも素敵だったなと思う今日この頃。

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