G-2グループ
*この作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
芸術とは何か。
ある者に言わせれば愛情で、ある者に言わせれば劣情で、ある者に言わせれば感情で、ある者に言わせれば純情だ。
芸術とはなにか。
ある者に言わせれば決別で、ある者に言わせれば決裂で、ある者に言わせれば決心で、ある者に言わせれば決壊だ。
芸術とはなにか。
私にとって芸術とは「生命」を主題にするものだ。
出会い、別れ、また出会い、己の才能も才覚も品性の欠片もない唾棄すべき直情を絵画に、演劇に、彫刻に、音楽に、映画に、生花に、写真に、陶芸に、武道に、そして小説に変換して出力する。
芸術を生み出しながら、芸術を産み捨てながら、芸術を吐き捨てながら「生命」と睨み合う。
それこそ芸術だ。
それは、こうして直にゴミになるであろう遺書を書き連ねている私でさえも、その範疇を出ていない。
醜い感情を切り取り、書き取り、書き出し、切り出す。
己の生涯を切り売りして熱望と絶望を買い、ケント紙に唾を付ける仕事はもう終わりだ。
「何も後悔することがなければ、人生はとても空虚なものになるだろう」
これはフィンセント・ファン・ゴッホ。
私達人間というのは、恥や思い出や恋心を降り積もらせて生きている。
恥の多い生涯だ。
恥の多い作品だ。
恥の多い活動だ。
恥の多い経歴だ。
それ故に、私の人生は空虚ではない。
満足ではなく満身創痍だが、この古傷の牙城を築くために何年という月日を費やしてきたことか。
さて、フィンセント・ファン・ゴッホは芸術家として死後名声を手に入れた人物だ。
私はそれを可哀想だとは思わない。
それどころか、私はそれを誇らしい、羨ましいとまで思う。
私も、死して尚、その名声を振りかざし芸術家としてその名を世間に轟かせていきたいのである。
私という芸術家の死は、民意や悪意を伴うソーシャル・ネットワーキング・サービスの中を縦横無尽に飛び回るだろう。
それが、私の「第二の人生」──否、「第二の人死」の始まりである。くだらん造語だ、反吐が出る。
さて、私がこの名を司り、小説を書き始めて早くも10ヶ月。
1年も活動していないのだが、こうしてお互いの心と体を傷つけ合いまた慰め合うことができるような愛も知も尊敬の「そ」の字もない愚かで下劣で見苦しい友情が芽生えたこと、ナショナリズムが誕生したことに驚きつつも感動している。
そんなくだらん友情を宿した君達15名に私の「第二の人死」を祝福するべく、また君達の才覚を世に放つべく、役目を与える。
日本京阪銀行大津支店。
私の貯蓄日本円、3000万。
この金を、15名の内の1人を小説家として世に売り出すこと、それ即ち書籍化してデビューすることに使用することをここに宣言する。
株式会社ゼーレ・管理人。
おとーふコロシアム・主催。
稀代な天才小説家。戦友・蛮勇・名はとーふ。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「これが先生の遺言書?」
「とーふ先生の遺言書」
「なろう・カクヨム新進気鋭」
「蛮族とーふの朋友・仲間」
「その友の名をこの世に残す」
「ために財産託された」
「──ってのに、いねぇよ!
「どうして来ない?何故来ない?」
「友の頓死を弔わぬのか?」
「書籍化の機会投げ捨てるのか!?」
「集まったのは
「どうせ逆張り・恥ずかしがり屋。家が遠くて辞退をしたな」
「集められたは
「──はい。一人一言ずつ喋ったところでリズム感重視はここまでにしまして。どうやって書籍化する人を決めましょう?」
「てかまずそもそもはーい、質問でーす」
「むむむ、どうした?我が同志・柴野いずみ先生」
「先生って呼ばれるほどでは無いですよ。それで、質問ってのは、本当にとーふさんって死んだんですか?」
「「「え?」」」
「ほら、わからないじゃないですか。届いているのは手紙だけ。ただ私達は住所を知らされここに来ただけ。どこかで生きているのかも」
「確かにそうだな」
「その通り」
「カナタ君なら知ってるんじゃね?」
「カナタ君?」
「そうカナタ君。とーふ先生の……何者だ?」
「夫婦?恋人?腐れ縁?」
「何はともあれ、難波の誉れ。大阪生まれのとーふ先生をよく知る人には変わりない。誰か連絡つかないか?」
「あ、その件なら事前に連絡したよ」
「さっすがミクラレイコさん!仕事も筆も早すぎる!」
「──で、なんですって?」
「消息不明」
「「──なんですって!?」」
「とーふ先生だけでなく、カナタ君とも連絡つかず。今の現状、五里霧中」
「おいおい、マジかよ」
「──と、言うわけで。生死も安否もわからない中で、どうして私達15名が……2人来ていないから13名が、京都の旅亭『木綿亭』に集められたのか。少し時間は遡り……」
「「「クソがッ!」」」
「読者を舐めるな!ここはおとーふコロシアムBブロックG-2グループ!見る者全てが精錬されたweb作家!目が肥えてるから過去回想なんて言う文化レベルの低い展開は通用しないぞ!」
「そうだそうだ!全ての記憶が無くなって尚、己の置かれた状況を面白おかしく叙述してこそ、俺達小説家の役目なはずだ!」
「「「小説家……」」」
「そう!俺達13名はカクヨムや小説家になろう・アルファポリスにpixivでセコセコと文字を書き物語を紡ぎ評価されれば欣喜雀躍。レビューされたら狂喜乱舞する承認欲求に塗れた小説家!己が被害妄想と他責思考の塊であることを自覚しながら責任転嫁と敵前逃亡で誤魔化し、お互いを褒め合うことで堕落しきった社会不適合者だ!誰が死のうが興味はねぇ!俺達の注目の的は書籍化、ただそれだけだぁ!!」
「代弁ありがとうございます。それで最初の疑問に戻るわけですが、どうやって書籍化する人を決めましょう?」
「大人気アイドルあかりんに歌にしてもらう!」
「却下!」
「作詞作曲は俺担当!」
「なおさら却下!デスゲームを開催する!」
「「「デ、デ、デ、デスゲーム?デデ、デスゲーム?」」」
「そうだ、デスゲーム!いや、些か表現が物騒だ。表現を変えよう。名づけるならそう!おとーふコロシアム!」
「「「おとーふコロシアム……!」」」
「って、なんですかそれ!」
「いや、これまで話が横道に逸れていたから口を挟めていなかったんだが、これはとーふ先生からこの俺が直々に、そう!直々に頼み込まれた企画だ!」
「流っ石、春風悠里先生!」
「そう、直々に!企画の概要は──これが掲載されているところのルール概要説明を見ろ!もう尺が少ない!」
「ルールはともかく、どうして直々に?」
「単純明快、その理由は俺が書籍化作家だからだ!書籍化作家の特技を見せてやる!たっきゅん先生、こんにちはと言ってくれ。その間に書籍の宣伝をする!」
「できるんですか?」
「当ったり前だ!」
「じゃあ、言いますよ?
「どうだ、すごいだろ!これが書籍化作家の力ってやつだー!」
「それで。書籍化作家はおいておいておいて。私達は作品を出せばいいの?」
「あぁ、そうだ。4名×4グループを作って作品を競い合う!そこでの勝者こそがとーふ先生のポケットマネー3000万を手にすることになるだろう!ここに、おとーふコロシアムの開幕を宣言する!」
「「「夢と希望に吸い寄せられたとーふの戦友15名。とーふの作品世に残すため、我らの作品世に残すため、おとーふコロシアムが開幕したのであった!」」」
──おとーふコロシアム 2月度 Bブロック 開幕
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