第3話  事故現場のネコ

 そして俺の運命は大きく変わった。


 あれは、やっぱり虎太郎こたろうを拾った時からだな‥‥‥


 去年の10月、シトシト雨が降っていた日だった。学校からの帰り道、午後から降り出した雨に、俺は、昨日、録画したアニメを見るべく帰宅途中だった。すべての面でフツーの俺は、進学する高校も推薦でいくつもりでいた。


 救急車とすれ違った俺は、そのネコが何故かそれを見送ってるように見えた。キジトラの子ネコだった。


「みぃ~~~~」


(何か切なそうに泣くんだな‥‥‥)


「親と逸れたのか……? 濡れてるじゃないか!」


 俺は、リュックからジャージを出すと、子ネコを包んで抱いてやった。

 子ネコは、「みぃ~~」とまだ震えていた。


「キジトラのオスか? 【怪物の幻夢】の「梨花」の使い魔と同じだな。じゃあ、虎太郎こたろうだ」


 でも俺は、考えてなかったんだ。

 家は、母さんと2人暮らしでアパート住まいだ。当然ペットは不可!!


 抱き上げてしまったぞ!! 俺のジャージに包んで!! 名前も付けてしまったぞ!! 

 どーする!!?? どーする!!?? どーする!!??


(しまった~~ 家に連れていけないじゃん……でもなぁ……)


 虎太郎の顔を覗き込むと、安心したのか喉をゴロゴロ鳴らしていた。


「大家のおばあちゃんに頼んでみるか……」


 俺は大きな溜息をついて、家路を急いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る