第6話 冒険者試験
異世界転生を果たした翌日。私は冒険者になるためにギルドへと向かい、明日の試験の受付を済ませた。若干奇異の目で見られつつも、受付を済ませた後は次なる宿を探して町中を歩いていたんだけど、偶然にも路地で行き倒れていた女の子を見つけ、彼女を助けた。
~~~~~~
「たまには居ても良いんじゃない?そんなヒーローみたいな人間がさ」
「ッ!」
私の笑みと言葉に、彼女は驚いた様子で目を見開き息を飲んだ。
「す、すごい、ですね。そんな事言える人、初めて見ました」
「そう」
驚いた様子の彼女の言葉に、私は笑みを浮かべながら頷き返した。
……あれっ!?今私、滅茶苦茶恥ずかしいセリフ言ってなかったっ!?やっば恥ずかしいっ!!
数秒前のカッコつけた自分を殴り倒したいっ!あぁうあぁっ!調子に乗ってバカやったぁっ!うぅ、顔が熱いっ!な、何とかポーカーフェイスで乗り切るっ!
「あ、あの」
「んっ?!な、何?」
不意に声をかけられたっ!若干声が上ずった気がするけど、ポーカーフェイスで乗り切れ私ぃっ!
「本当に、ありがとうございます。助けて頂いた上に食べ物まで、いただいて。こんな、私なんかのために」
う~ん、この子、何て言うか自己肯定感低いなぁ。私なんかのために、なんて。
「何度も言ってるけど、気にしないで。私がお節介好きってだけだから。って、そういえばあなたはこれから大丈夫なの?」
「え?」
大丈夫、の意味が分からないのか彼女は首を傾げた。
「お金、無いんでしょ?良かったらもう一つのレーション、じゃない非常食も持ってく?」
そう言って私は未開封の、もう一つのFSRを差し出した。
「えっ!?」
今の彼女はお金を持ってないみたいだし。よくよく考えたら、例え今レーションで空腹を満たしたとしても、次の食事を確保できなかったら餓死を先延ばししているだけ。そういう意味ではただレーションあげるのも、延命処置くらいにしかならないんだけど。
本当なら気前よくお金を渡すか、仕事の紹介とかしてあげられれば良かったんだけど。今は無職で他人に恵んであげられる程の貯金も無く、仕事を紹介してあげられるだけの人脈も無いから、これくらいしか出来ない。
「そっちのレーションは開けちゃったから出来るだけ早く食べないといけないし。お金も無いんでしょ?だったらこっちも持っていく?私は後ですき、じゃないっ。適当に仕入れられるからっ!」
あ、危うく『スキルで買えるから』って口を滑らせる所だったっ!危ない危ないっ!スキルの事は出来る事なら秘密にしたいしっ!下手にバレて情報流出して、変な奴に目を付けられても困るしっ!まぁ今はそのことは置いといてっ!
「ど、どうする?」
「い、いえっ!大丈夫、ですっ。明日の試験に合格すれば、お金のあてもあるので」
「ん?試験?」
彼女はお金のあてがあると言うけど、明日の試験?ってもしかして……。
「その試験って、まさか明日の冒険者登録の試験の事?」
「え?はい、そうですけど?」
やっぱりっ!明日の試験って言うからまさかとは思ったけどっ、この子も冒険者志望の子だったんだ。
「そっか、なら私と同じ試験の参加者って事だね」
「え?さ、参加者って、えっ!?冒険者の方、じゃないんですかっ!?」
おぉう。女の子が驚いた様子で大声を上げてちょっとびっくりしたっ。いやまぁ、らしい見た目をしてるとはさっきの受付のお姉さんが似たような反応してたから自覚してるけどさ。
「見た目がそれらしいだけだよ。まだ冒険者じゃないんだ、私」
「そ、そうだったんですか。防具を身に付けていたので、てっきり。すみません、勘違いしてしまって」
「良いの良いの。それっぽい装備を勝手にしてたのはこっちだしさ」
頭を下げる彼女に対し、気にしないで、と言わんばかりに手を振る。って待てよ?この子もあの試験に参加するんだよね?森にはゴブリンも居るし、正直一人で行動するのはちょっと怖いんだよなぁ。戦えると言っても不意打ちに対応できる自信は無いし。……ちょっと『誘ってみよう』かな?
「ねぇねぇ。話は変わるんだけど、一つ話を聞いてくれないかな?」
「話?」
「そっ。と言っても簡単なものなんだ。明日の試験、私と一緒に行動しない?」
「い、一緒に、ですか?」
彼女はこちらの提案に驚き、戸惑っている様子だった。まぁいきなり誘われたら無理も無いか。私達は初対面でお互いの名前すら知らないんだもん。信じられる訳ないか。それに、この話の持っていき方は若干卑怯かな?とも思った。だって私に恩がある彼女にとって、頼まれた事は断りずらいはず。
「まぁ。出来ればで良いから。私としても明日の試験は、一人だけだとちょっと不安でさ。誰か一緒に動いてくれる人はいないかなぁって思って」
「それで、私を?」
「うん。私って遠くから来たから、この辺りに同世代の友達とか知り合いっていないんだ。もちろん冒険者やるような知り合いもね。試験は簡単だって聞いてたけど、それでも怖いから誰か一緒に回ってくれないかなぁって思ったんだけど。あっ!無理なら無理って言ってくれていいからねっ!?レーションの事とかは気にしなくて良いからっ!」
協力を頼んだのは私だけど、だからって恩を利用して協力してもらう事を無理強いはしたくない。だから咄嗟に言葉を付け加えた。
正直、誰かが傍に居てくれた方が安心できる気がした。けれどこれは私の我儘。レーションをあげて行き倒れていた所を助けたからって、無理強いまでして協力してほしい、とは思わない。『手伝ってくれたらいいなぁ』、程度の考えだった。
「……ごめん、なさい。助けてもらった事は、感謝しています。でも私じゃ、足を引っ張っちゃうかも、しれないから。だからっ、ごめんなさいっ」
「そっか」
自信無さげに目を伏せ、俯きながら頭を下げ謝罪する彼女の姿に、私はただ頷いた。
「まぁ良いよ。気にしないで。私としてもダメ元で聞いてみたとか、そんな感じだから」
ダメなら仕方ない。諦めますか。
「は、はい。すみません、わざわざ恩返しのチャンスをくれたというのに」
申し訳なさそうに目を伏せ頭を下げる彼女。ホント腰が低い子だなぁ。
「良いの良いの。ってかホント、恩を返そうなんて思わなくて良いから。『ただ飯貰ったラッキー』、くらいに考えてくれればそれでいいからさ」
「わ、分かりました。じゃあその、私は、これで」
「うん」
フラれちゃったなら仕方ない。明日は1人で頑張りますか。……ってそうだっ!
「あっ!ちょっと待ってっ!」
聞きたい事があって、歩き去ろうとする彼女に声をかけた。
「は、はいっ、なんでしょう?」
思わず声をかけると、彼女はビクッと体を震わせて振り返った。まだ信用されてないのかなぁ。ま、それは別に良いけど。それより。
「名前、教えてよ。それくらいは良いでしょ?」
「え?は、はい」
最初は疑問符を浮かべた彼女だけど、頷きながら私に向き直ると姿勢を正した。
「えと、私『マロン』と言います。は、はじめまして」
マロン、栗かぁ。確かにマロンちゃんの髪は栗色。確かにこんなにぴったりな名前は無いかも。っと、そうだ私もっ。
「私は真矢って言うんだ。よろしくねマロンちゃん」
「マヤさん、ですね。はい、分かりました」
さて、とりあえず自己紹介も出来たし、これ以上私がマロンちゃんを引き留める理由は無いね。うん。
「じゃあマロンちゃん。明日はお互い頑張ろうね」
「はい。マヤさんもどうかお気をつけて」
「うん、お互い生きて立派な冒険者になろうね」
「ッ。え、えぇ、そう、ですね」
ん?何だろう。マロンちゃんの言葉。まるで私の言葉に何か引っかかったような、戸惑うような言葉の乱れ。視線も周囲に泳いでいる。……私何か不味い事言ったかな?
「あ、あのっ、では私はこれでっ!失礼しますっ!」
「え?あ、あぁうんっ!」
思わずそのことを考えていると、マロンちゃんが私に頭を下げ、足早に離れていった。
「あ、明日はお互い頑張ろうね~!」
何か不味い事を言ったんじゃ?そう思い不安になった私は咄嗟に、少しでも応援になればと脳裏に浮かんだ言葉を叫んだけれど、マロンちゃんは振り返る事無く、足早にどこかへ行ってしまった。
「……何か悪い事言ったかな、私?」
突然の事で思わず独り言が漏れた。しかし私、変な事言ったかな?生きて立派な冒険者に、って言ったけど。……うん、別に変な事言ってないよね私?……もしかして変な煽りみたいに思われちゃったとか?いやでも、今の言葉を煽りに捉えるかなぁ?
マロンちゃんの最後の反応、めっちゃ気になるんだよなぁ。言葉に反応して戸惑ってるようにも、困惑しているようにも見えた。……でも、自分で言うのもあれだけどさっきの私の言葉、言われて戸惑うような言葉にも思えないんだよなぁ。私からすれば単純な応援って言うか、『一緒に頑張ろう』って意味の言葉だったんだけど。……う~ん、分からんっ!
結局、最後のマロンちゃんの反応は気になったけど、もう本人も居ないし。それに私はまだ宿探しという今日の仕事がある。
少しモヤモヤは残ったままだけど、今日泊まる宿を早く見つけないとっ!よしっ!切り替えていこうっ!
~~~~~~
あの後、私も路地を出て本来の目的であった宿探しのために歩き出した。しばらく歩くと、ギルドで教えられた高級宿が立ち並ぶ通りまでやってきた。そこから路地に入り歩くと、冒険者らしい恰好の人たちが行きかう、安宿が立ち並ぶ場所に出た。
そこでとりあえず、片っ端から宿に入って値段や空き状況を確認してみた。けど最初はダメダメ。やっぱり大通りに近いから、もう既に他の冒険者の人たちが宿を取ってて空きは無し。仕方ないからどんどん奥へ奥へと進んでいく。
奥へ進んでいくと、それに合わせて宿のグレードも下がっていく。けどまぁ仕方ない。最終的に、よく言えば味のある、悪く言えば古い安宿を見つけて部屋を取った。その部屋もはっきり言って、昨日泊まった宿より質素だった。机と椅子付きテーブル、後は古い燭台があるだけの質素な部屋。まぁ野宿よりマシだけどさ。
ハァ、早く冒険者になって、いっぱいお金を稼いで、良い宿とかに泊まりたいなぁ。……或いは、自分で家を買っちゃったりして。
ふとしたことを、ベッドの上で横になりながら考えちゃった。
「いやいや、そんな事考えてる場合じゃないか」
そう言う未来のことは今考えるべきじゃない。今集中するべきは明日の試験について。万が一にも失敗出来ない。とにかく今日は、グリースガンの整備と早く休む事が大事っ!よしっ!やりますかっ!
~~~~~~
銃の整備に関しては、スキル≪
銃は繊細な武器だからね。ちゃんと手入れしないと。……とは思うんだけど。
「あれっ?これってどこのパーツだっけ?ここ?じゃないこっちかっ!」
わ、分からない事が多いよぉっ!あれっ!?あのちっちゃいパーツどこ行ったっ!?あっ!床に転がってるっ!あっぶなぁっ!見つかって良かったぁっ!
何とか目の前に浮かんだスキルのディスプレイから流れる動画を頼りに、四苦八苦しながら掃除と再組み立てを行っていく。
「だ~~!疲れたぁ~!」
ようやく組み立てが終わって、マガジンを抜き、薬室に弾が入ってない状況で軽く動作を確認してから、思わずベッドの上に寝転がった。ハァ、パーツを無くしたらグリースガン使えなくなるかも?って思って作業してたから、緊張感で疲れた。
え~っと、グリースガンの分解清掃は出来たし、M34の方は。使ってないから大丈夫、かな?あぁそうだ。昨日の戦いで空になったマガジンに弾入れなおさないと。ハァ、銃を使って戦うのも、楽じゃないなぁ。でもこれが私の命を守るための道具であり武器なんだ。手入れや準備は、しっかりしないと。
「ハァ、ダルい」
小言の一つも漏れるけど仕方ない。もう一度体を起こし、この前の戦いで空になったマガジンに弾込めをしていく。
~~~~~~
あの後、明日に向けた準備は一通り完了した。マガジンに弾を入れてグリースガンも整備した。リュックの中もFSRを一つマロンちゃんに上げてスペースが出来てたから荷物も整理し直してっと。
「さて、これで準備はOK。後は……」
まだ何かすることあったっけ?と思い周囲を見回していると。お腹から『クゥッ』と小さな悲鳴が。腹が減った、とお腹の虫が訴えかけてくる。
「あぁ、しまった。今日お昼食べてなかったじゃん」
そう言えば、お昼ごろはマロンちゃん助けててすっかりお昼食べ損ねたんだっけ。あぁでもこの安宿じゃ朝食しか出さないんだっけ?夕飯は、どこかお店探さないとなぁ。
仕方ない。リュックは部屋に置いて行って、お金はプレートキャリアの小物入れに入れて、持っていく武器は、M34だけで十分か。下手にグリースガン持ち歩いて、盗まれても事だし。
~~~~~~
夕食は、宿の女将さんに良い店が無いか聞いて、近くに冒険者向けの安い飯屋がある、って教えてもらった。そこで食事をして、とりあえずお腹は満たせた、んだけど……。
「うぅ、美味しく、無かった」
はっきり言って、美味しくなかった。めっちゃ薄味だった。パンは堅い黒パンだし、サラダはレタスっぽいのに軽く塩をふってあるだけ。ベーコンは脂身ばっかりでその上硬い。スープは薄くて味なんてほとんどなし。飲み物だって酒かミルクは水くらい。
そりゃ安かったよ?収入源の無い私には助かったよ?でも味とかがなぁ。
「ハァ、これならレーション食べてた方がよかったかも」
でもそれは無理だよねぇ。レーションだってタダじゃない。ある程度収入が安定してきたら、それも良いかもしれないけど。少なくとも今は無理。
「ハァ、今後は、こんな食事に慣れていくしかないのかなぁ」
折角の食事だったのに、お腹は満たされたけど心は沈むばかり。もう早く部屋に戻って寝よ。明日も早いし。
その後は真っすぐ宿に戻って、部屋にたどり着くと、装備一式を外してベッドで横になった。……あぁ、昨日からずっとこの格好のままだなぁ。着替えたいなぁ。でも替えの下着とか服とか無いしなぁ。お風呂にも入りたいけど、こんな安宿じゃ水を貰って濡れたタオルで体を拭くのが精いっぱいだってさっき女将さんに聞いたし。
……何もかも、前世の世界と比べて不便。……本物の銃を触って使える事は、確かに嬉しいけど。お金を稼ぐのも大変かもしれない。自分の事は全部自分でやらなきゃいけない。前の世界より、何もかも不便。
「……元の世界に、戻りたい」
叶わないと分かっていても、その願いを口にしてしまった。
「……もう、寝よ」
考えても仕方ない。後悔しても仕方ない。神様でさえも、私をあの場所に戻せないのなら。人間の私が何か出来るわけもない。後ろには下がれない。ただ、前に進むしかないんだ。
帰れない現実に痛む心に、必死にそう言い聞かせながら、私は眠りについた。
~~~~~~
次の日の朝、幸いな事に私は起きれた。安宿って言うのもあってか、朝になれば冒険者たちが動き出す。その喧噪がアラーム替わりだった。ドタドタと廊下に響く足音で目覚め、体を起こし伸びをする。
「ふぁ~~~」
正直まだ眠い。寝ていたい。寝起きでまだ体が怠い。でも……。
「行か、なきゃ」
生きていくためにはお金が必要なんだ。それは分かってる。お金を稼ぐためには、冒険者になるしかない。『今日の試験は、何が何でも外せない』。
眠気を覚ますために、そして気合を入れるために、両手で頬を力強くパンッと叩くッ!……やっぱイッタ~~!
ジンジンとした痛みが伝わり、でもおかげで目が覚めたっ!痛みで思考がクリアになる。今日やるべき事を、再確認する。冒険者ギルド主催の試験を受けて、是が非でも合格して冒険者になる事っ!これから、この世界で生きていくためにっ!
生きるために私は、冒険者になるっ!
「よしっ!今日はやるよ、私っ!!」
絶対に合格してやる、と自分に何度も言い聞かせるっ。さて、となればまずは朝ごはんっ!
~~~~~~
私は部屋を出て一階の質素な食堂へ。そこで簡単なパンとスープの朝食を貰った後、すぐに部屋に戻って装備を身に纏っていく。各種プロテクターにヘルメット、プレートキャリアを装備し、リュックを背負い、そして、傍に置かれていたグリースガンを手に取った。
暴発を防ぐために、一応寝る時はマガジンを抜いてある。まずは安全装置でもあるカバーを開き、そのまま指先をボルトの窪みに引っ掛けて引く。ボルトが後退位置で停止したのを確認して引き金を引くと、後退していたボルトが前進した。
「よしっ」
うん、動作に問題は無い。すぐにマガジンを差し込んでから、コッキングはせずに安全装置であるカバーを閉じる。
装備は身に付けた。荷物の忘れ物も無し。銃も持った。これで、準備はOK。
「……いよいよか」
不安で僅かに手が震える。試験と言っても、死ぬ危険もある実戦形式の物。そのことで恐怖や緊張を感じている。一度ゴブリンと戦った事はあるけど、一度だけだしこちらの奇襲が成功しただけ。以前とは状況が違う。けれどっ!
ここで逃げるわけには行かないっ!生きていくためには、もう、やるしかないっ!!
「すぅ、はぁ。すぅ、はぁ」
とにかく気分を落ち着けないと。深呼吸をして、ひとまず気持ちを整える。そして……。
「っしっ!行きますかっ!」
覚悟は決まった。不安や恐怖を完全に消しされてはいないけど、仕方ない。私は部屋を出て、ドアに鍵をかけると受付の女将さんに鍵を預け、宿を出た。そして、未だに感じる不安と恐怖で、足が重く感じるけれど、でもそれでも一歩一歩、ギルドへと向かって行く。
~~~~~~
ギルドに向かって何とか歩いていると、やがて私と同い年くらいの、試験の参加者らしい子たちをチラホラと見かけるようになった。
私が着ているのと同じような、安そうな服に身を包み、申し訳程度に小さなナイフや革の防具を纏った子たちが私と同じくギルドへと向かっていた。中には紐付きの袋を肩から下げているだけの子も居た。
大多数の子たちの表情は硬い。試験とは言え実戦。それは皆も分かっているみたい。硬い表情のまま、流れ出る汗を拭っている子も居れば、恐怖で僅かに震えている女の子もいる。一部は仲間らしい子たちと談笑しながら歩いている男の子たちも居た。会話の一部が聞こえてくるけれど、『余裕だろ』、『楽勝』なんて単語が聞こえてる。楽観的だなぁ。と、正直呆れてしまう。あんな舐めた態度で大丈夫なのかな?と心配にもなる。……でも仲間かぁ。いてくれれば確かに心強いなぁ。……あっ、そういえばマロンちゃんは?いるかな?
ふとした仲間、という単語から昨日のマロンちゃんに協力を断られた事を思い出した。近くにマロンちゃんはいないのかな?と気になって周囲を見回すけれど、居ない。まぁ、見つけた所で声をかけるのが関の山だろうけどさ。昨日断られたし、しつこく勧誘するのも不味いよなぁ。
「あっ」
と、そんな事を考えているといつの間にかギルドが見えて来た。そしてその前には、ざっと見ただけでも数十人の人たちが集まっていた。これが試験の参加者なのっ!?思ってたより多いなぁ。100人、とまではいかないかな?でも多いなぁ。
とりあえず、どっか邪魔にならない所へっ!
~~~~~~
それからしばらくして、更に人が集まって来た後。
「あれ?」
ギルドから受付のお姉さんが出て来た。しかも後ろにごつい冒険者の人たちもいるし。
「え~、冒険者試験に参加されるみなさ~んっ!」
「ん?何だ?」
「おいあれ、ギルドの人だぞ」
お姉さんが声を上げると、談笑していた冒険者の人たちもお姉さんに気づいてそちらに視線を向けた。
「これから皆さんにはこのレトラントの町の南にある森で試験を受けてもらいま~す!まずはその入り口まで行きますから、この監視役の冒険者さん達について行ってくださ~い!詳しい試験内容は森の前に待機している方が説明しますから~!」
と、お姉さんの言葉が言い終わるや否や。
「おい新人共ッ!行くぞっ!!!」
「ッ!」
お姉さんの傍に居た冒険者の、野太い声が響き渡ったっ。その声に驚いて思わず体が反応してビクッてなっちゃったっ!び、びっくりしたマジでっ!ってか見られてないよねっ?
思わず周囲を見回すけど、どうやら驚いてるのは私だけじゃないみたい。ち、ちょっと安心したかも。
「おらグズグズするなよっ!遅いと失格にするからなぁっ!」
しかしそうこうしている内に冒険者の人たちが足早に歩き出してるっ!?それに周りの子たちが慌てて追いかけ始め、私もそれに続いたっ!
そうして、冒険者になるための試験がいよいよ始まろうとしていた。
硝煙漂う百合ハーレム @yuuki009
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