第6話 いざ教室へ
そこそこ新しくてそこそこ立派な校舎に入るのは入学オリエンテーション以来だったけど、高校の制服を着て歩くのは少し変な感じ。
ドキドキしてソワソワして、落ち着かない。
そう。
「同じクラスみてぇだし、ま、仲良くしてくれや。こけし」
ドキドキしてソワソワして落ち着かない!
さっきまでは私の後ろを不思議そうにキョロキョロしながら(どうやって入試とオリエンテーションを乗り切ったんだろう!)歩いていた最上君は、いつの間にやら私の隣を歩いている。
っていうか、皆さん引いてらっしゃるんですけど!!やっぱり最上君って私以外から見ても怖いの!?そして私って自己紹介したのに、やっぱりこけしなんだ……。
黙って道を空ける生徒たちに顔を覚えられないように俯いて足を進める。
私は関係無いんです。道案内してるだけなんです。私も怖くて口から心臓が飛び出そうなんです。
やっとの思いで4階の1年2組の教室前に辿り着けば、壁に背を預けて薫君が立っていた。
た、助かった!!
近づいてくる私たちに気づいた薫君は最上君を一瞥し、小首を傾げて私に視線を移した。
最上君は鋭い目を薫君に向けてから、私に目を落とす。
最上君には初対面の相手はまず睨みつけなければならないという自己ルールでもあるんだろうか。私が言うのもなんだけど、そんなことしてると絶対に友達ができないから止めた方が良いと思う。
「こけしの知り合いか?」
「……幼馴染、です」
「あっそ。じゃ、アリガトな」
自分から聞いたクセに興味のカケラも示すことなく、最上君は薫君の横を通って教室に入っていった。
薫君に「あ、今の人は最上君っていって」と、ことのあらましを説明しようとしたのに、「覚えられないからいい」とバッサリ切られた。
覚えられないんじゃなくて、覚える気が無いんでしょう。 肩を落としてから、薫君の横顔を見上げる。
「……ごめんね。勝手にいなくなって」
「別に」
何も気にしてない、と呟いた薫君もまたスタスタと教室に入っていった。本当に気にしていないのかどうか、長い付き合いの私も判断がつきにくい。
ふ、と小さく息を吐いて顔を上げる。
よ、よよよし、生まれ変わるんだ!私!
こっそりと拳を握り締め、私は教室へと足を踏み入れた。
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