生まれ変わりたい
第1話 今日から女子高生
穏やかな朝日が射し込む部屋で、鏡を覗く心中穏やかではない私の顔。誰が見ても心配になるような蒼白ぶりだ。
机上のデジタル時計を確認して肩を落とす。何度見たところで日付けが変化するわけでもないのに。
4月6日。
起床してから幾度となく時計と向き合ってきたけど、やっぱり同じ日付け。当たり前だけど。
こ、こんなことじゃ駄目だ私!!
両頬を挟むように叩いて再び鏡に向き直れば、毎日見てる辛気臭い顔が。
生まれつき黒よりは茶色に近い髪の先をひとつまみ。中学時代の三つ編みを卒業して女の子らしいボブカット、を目指したのに、どう足掻いても【おかっぱ】としか言われない。自信なさげに下がる眉尻を人差し指でキュッと上げてみても、情けない顔のまま。
目は大きい方なんじゃない?と、私のことを世界一かわいいと思っているお父さんが無理に絞り出した私の外見における唯一の取り柄は、不安そうに揺れている。
さっき叩いたお蔭で若干赤みがさした頬は、さっきよりも健康そうには見えた。
弱気になるな!!今日は東高校の入学式なんだもの。高校では友達をいっぱい作って帰り道にアイスを食べて色んな味を一口ずつ交換して……っていう夢を叶えるんだ!!
ネクタイを締め、シワ一つないブレザーを羽織る。
ビビってばかりで、せっかく話しかけてくれた子とすら会話が上手く成り立たなかった中学生は卒業したんだ!友達つくって、部活とか入って、あわよくば青春して。今日からは学校生活が楽しくて楽しくて仕方ない高校生になる!!
鏡に向かってニッコリと笑った瞬間、階下からのんびりと私を呼ぶお母さんの声。
「あけびー。薫君が迎えに来てくれたわよー」
「はーい!!」
慌ててカバンを引っ掴み、ドタドタと階段を駆け降りて玄関へと走る。
「お父さんは仕事だけど私は入学式行くからね」
「ありがとう!」
手を振るお母さんに「行ってきます」と告げて勢いよく玄関の扉を開けた。
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