ケトルブラック

@kg27yuki

第1話 峰

 みねという人物はサタンやアドルフ・ヒトラー、そしてエリザベート・バートリと知り合いであった。世界情勢や人々の命を脅かす存在の裏にはいつも峰がおり、紛争、虐殺、そして科学では説明のしようがない厄災には、必ず彼が関わっていた。


 峰は自身がいつ、どこで生まれたのかを覚えていなかった。ただ覚えているのはかつて地球に存在した聖人の死後に生まれたということと、そして生まれ故郷が地球ではないということだけだった。ひたすらに神と人間を憎んでいるため、おそらくそのどちらかから生まれたというわけではないのだろう。


 現在、彼は日本の中に位置する、東京と呼ばれる土地にいた。その東京の中で最も高いと言われている東京スカイツリーの展望台から、彼は夜景を見下ろしていた。闇に包まれた地上は赤、青、白、その他諸々もろもろの光で輝いており、彼はただ無言でその景色を見つめていた。


 この世界も変わってしまったな、彼は思った。


 かつての地球はこれほどまで悪徳に満ちていなかった。人間は暴力と快楽を覚えたことによって道徳を離れ、地球は今や偽善者が蔓延はびこる場所へと変わってしまっていた。日常の中には必ず誘惑が存在し、他者を引きずり降ろして堕落だらくの手助けをしようとする者まで現れる始末となってしまっていた。


 しかし、峰は堕落していく地球をとしていた。もとよりそれが彼の、そして彼の仲間の計画であったのだから。


 彼は展望台を後にし、エレベーターに乗り込んで下界へと降り立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る