十三、①
話は三時間ほど前に遡る。
ぼくとオルガさんは、彼女の仲間の手がかりをたぐり寄せる方法について、ブリク語でたっぷり密談した。
〈この世界には、『高度に発達した
〈大丈夫だ。テクノロジー、テクノロジー。語感が良いな〉
〈そうですかね。――で、テクノロジーはたいていの場合、特別な道具を操るかたちで使います。さっき、お仲間のことを道具があれば調べられるかも、って話したのは、世界じゅうでいま流れている
〈それは確かにすごいな。しかし、もし、わたしと同じように仲間が隠蔽されているのなら、そのテクノロジーは使っても意味がないという話だった。ということは、なにか、ほかのテクノロジーを使うのか?〉
〈ええ。ぼくの思いついた方法は、分かりやすく言うと、世界じゅうのひとがテクノロジーを使って見に来る超人気の掲示板に、これまたテクノロジーで、『別の世界からオルガさんが日本に来ていて、はぐれたお仲間を探している』っていう張り紙をすることです〉
〈おお、悪くない考えだ。だが、そういう張り紙をしても、仲間が隠蔽されているとしたら、だれも仲間のことは知らないだろうから、やはり、大した効果はないのではないか?〉
〈お仲間が隠されていたとしても、お仲間のことを知っているひとは、必ず、います〉
〈……仲間を隠蔽した当人か!〉
〈そうです。お仲間も当然、『別の世界から来た』と、そのひとなのか組織なのかに説明するはずですから、もし、同じような主張をしているオルガさんの張り紙を目にしたとしたら、必ず興味を持つと思います。張り紙にお仲間の名前なんか載せたら、なおさら信じてもらえるんじゃないでしょうかね。もちろん、見てもそのまま無視されたり、最悪、はがされちゃう可能性だってあります。でも、それはそれで良いことにしましょう。まずは、オルガさんがこの世界に来ているんだぞ、っていうことを、世界じゅうに知ってもらうことに意義があります。それをやってはじめて、なにかが動くと思うんです〉
〈うん、あなたの言うとおりだ。わたしが声を上げない限り、なにもはじまらないな。――よし、その話、乗った! それで、その張り紙のテクノロジーには、どんな道具が要るんだ?〉
〈そのテクノロジーにも、お巡りさんに没収された道具が要るんです。なので、最初は、ぼくの外出禁止が解けて、道具を返してもらったあとにやろうかと思っていました。が……〉
〈ん? わたしもそれで構わないが、なにか問題があるのか?〉
〈はい。いま、警察が、オルガさんのことを『最重要機密』だって言って、丸一日の間、一切情報を漏らさないように、ぼくを外出禁止にしているじゃないですか。じゃあ、丸一日過ぎたら、言いふらして良いの? っていう話なんです。たぶん、そうはいかないでしょう〉
〈なるほど、同感だ。わたしのことを、罪人だとか異常だとかと考えている連中のことだ。わたしをいつまでも、名実ともに封じ込め続けようするだろう。ノノがわたしの張り紙をするなんて知ったら、それを潰しにかかるのが、ありありと想像できる〉
〈ですよね。なので、もう警察にはなにも言わないで、こっそりやるしかないと思うんです〉
〈そうだな。悟られないうち、早々に決行しよう〉
〈ただ、そうすると、ぼくは、国家権力? の命令に逆らうことになります。そのおかげで、これまでみたいな普通の、平穏な生活ができなくなるかもしれません。だからさっき、オルガさんに約束してもらったんです。ぼくを守る、って〉
〈そうか。わたしは、決して軽々に約束をしたつもりはない。あなたがそこまで覚悟して、わたしに手を差し伸べてくれるんだ。わたしのやり方で、必ずそれに報いてみせる。この部屋にいる間は、大船に乗ったきもちでいてくれ〉
〈ありがとうございます。そのことば、信じます〉
〈うん。……それで、いつ、どうやって張り紙をするんだ? なにせ、ケイサツが四六時中見張っている。少しでも怪しい素振りをしたら、すぐにばれてしまうぞ〉
〈そうですね。なので、作戦を練りましょう。なんとかして、見張りの目を盗んで、テクノロジーを使えるようにするんです。その作戦のたたき台はもう、ぼくの頭の中にあります〉
〈おお、流石ノノ。なかなかの策士じゃないか。どんなものなのか、聞かせてくれ〉
〈はい。まず手はじめに、オルガさんには、鎧を脱いで、その、裸になってもらいます〉
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