第5話  呼べない名前

学年集会も終わりクラスごとに列で体育館を出る。4組の僕たちは最後だ。

リクもショウもふざけながら順番を待っている。まるで小学生のノリだ。

僕も2人に絡みながら1組が通りすぎるのを横目で見ていた。

『ミズキさん』

一瞬ボーっとした僕にリクが

「おーい、タクマ。何見とれてるんだ。」

ショウも「よく見ろよ。周りの男子の目、

ミズキさんに集中してるぜ。」

よく見ると男子はみんな見とれている。

そんな僕らの前をミズキさんは、通り過ぎていく。

時間を止めてと思ったがやめた。

何かやましい気持ちでズルをしているようだ。

ミズキさんを見るために時間を止めるのは良くない。

僕は無意識の中で誰かに・・・

「おい、タクマ進め。前、進んでいるぞ。」

はっとして前の列に進んだ。

1組はとっくに体育館を出ていた。

はじめの感覚だ。

無意識に時間が止まって進んだ。

『嫌な』感覚だ。

僕は前に追いつき、リク達3人と並んで歩いた。

「なあ、リク。僕ら2人ってクラス持ち上がりだろう。クラスのメンバーも変わらない。

だから1組のことなんか全然知らない。

だよな。」

「そうだ。」リクが答える。

シュウが「なんだ、1組のミズキさんのことか?

僕は1年の頃から知ってたぞ。

リクもだろう。」

「そうだ。」

「僕には情報なかっぞ。」

「そりゃそうだ。タクマ、女子苦手だろう。」

「そうだけど。」

「そんなタクマにわざわざ女子の話するか?

しないぞ。それにタクマ、女子を見る目がコワイしな。変な意味じゃないぞ。

毛嫌いしてるような、そっちの目だ。」

ショウが「なんだ。リクも気づいていたのか。

僕なんか、逆にタクマは男子にしか興味ないアブノーマルのやつかと警戒したよ。

タクマ、背丈はともかく、キレイな顔立ちだからな。」

「お前ら、そんな変なやつだと俺様のこと、

見てたのか?バーロー!女子が好きだー!」

「タクマ、いきなり俺様キャラに変身ですか?ハハハ。」

僕はふざけて2人の肩に手をまわす。

意味不明に顔を見合わせて笑った。

「じゃ、教室に行くか。」





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