魔剣クロノスを得るために! Ⅶ

日々菜 夕

第7話

この物語はフィクションです。登場する人物。地名、団体名等は全て架空のものです。





 王都へ行った私達は――


 とある命令を受けた!


 邪神メダスを倒してこいという無茶なものだ。


 しかし王命である。


 従わなかった場合の事なんて考えたくもない。


 しぶしぶではあるが、受諾する以外の道がなかった。


 そこで、褒美も勲章も要らないから、私の村の安全と。


 今回、大きな被害を出した村の復興支援をしてほしいと願い出た。


 なにせ、メダスの右腕のせいで亡くなった人も大勢いるからです。


 私、個人の戦果としては良かったのだろうけれど。


 あの凄惨な状況が今でも脳裏に焼き付いていて、頭から離れない。


 いくら褒められても、素直に受け入れられないというのが本音だったりするのです。


 しかも、いま向かっている最前線は人の死にもっとも近い場所とも言えます。


 そんな場所に喜んで行く人なんて勲章や名誉が欲しい一部の人だけでしょう。


 経緯はどうであれ、魔剣クロノスの正規品を手に出来たのは大きいかもしれない。


 私も、先生も、本物の魔剣を手にしている。


 だからと言って、邪神メダスを討伐できる可能性は限りなく低い。


 なにせ噂が本当なら、邪神メダスの命は10個もあるそうなのです。


 その一部を切り離して強力な部下を従えているという……


 なんとも厄介な相手。


 先生の見解によると。


 一つは、あのリッチが持っていただろうから――あと9回殺す。


 もしくは、他にも魂を分けることで生まれた強力な魔物が居れば、それらを倒すことで私達の勝利に近づくのではないかという話なのですが。


 いずれにしろ、長い戦いになることは必然。


 あぁ……


 私と先生の結婚式は、いつになったら出来るのでしょうか?


 馬車に揺られて赴く先は最前線。


 いくら愛する先生が隣に居てもイチャイチャ出来ないこの殺伐とした空気。


 兵隊さんが一緒に居るからです。


 いくつもの馬車が連なり戦場へと向かっている。


 この状況下で出来る事なんて何もないのです。


「安心しろ、ロゼット。お前さんは、まだまだこれからも強くなれる。きっと邪神メダスにも届くことができるさ」


「でしたら、この戦いが終わったら結婚して下さいますか?」


 正直なところ、いつ終わるかも分からない戦い。


 せめて、言いたいことは今のうちに言っておかないと後悔しか残りません。


 先生もそれを分かっているのか。


「わかったよ。こんなおじさんのどこが良いんだか分からんが。俺で良かったら婿入りさせてもらうとするさ」


 特に考えるそぶりもなく、こたえてくださいました。


「では、約束ですからね!」


「あぁ。約束だ」


 笑みを浮かべる先生の顔に誓いをたてます。


 絶対に、生き残って村に帰るのだと!


 そして、ささやかながらも幸せをつかみ取るのだと!


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魔剣クロノスを得るために! Ⅶ 日々菜 夕 @nekoya2021

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