ウミガメ編 第8話:波の地図—失われた故郷の座標

 ◆消えた島の手がかり:波の記録を辿る


 ゆりあは、スマートフォンでさらに詳しく海流のデータを調べていた。

 黒潮に乗って日本近くまで流されてきたウミガメ。

 けれど、その**「本来の故郷」**がどこなのか——まだ分からない。


「……過去の海図があれば、何か分かるかも」


 ゆりあは、"古い地図"について検索をかけてみる。

 すると——


「……あった!」


 ・ 1950年代の海図データ

 ・ かつて存在したが、今は地図にない島


「クック……消えた……?」


 オウムが小さく囁く。


「うん……この島、今の地図には載ってない……」


 ゆりあの指が、画面上の小さな点をなぞる。

 それは、かつての海図に記されていた、小さな島。


「……君の故郷、ここかもしれない」


 ウミガメは、静かに水槽の中を漂っていた。

 まるで、その言葉を待っていたかのように——。



 ◆波が運んだ記憶:消えた島の謎


 ——青い海。

 ——遠くに見える、緑の生い茂る島。

 ——けれど、その島は、ある日突然"霧の中"に消えてしまった。


「……やっぱり、"何か"があったんだ」


 ゆりあは、水槽をじっと見つめる。

 ウミガメの記憶にあった霧、それは単なる自然現象ではない気がする。


「クック……島、消えた……?」


「でも、完全になくなったんじゃなくて、"隠された"んじゃない?」


 オウムの羽がふわりと揺れる。


「もしかしたら、何らかの理由で人間が関与しているのかもしれない……」


 例えば——

 ・ 海流の変化による島の侵食

 ・ 環境破壊によって消えた可能性

 ・ 地殻変動で海に沈んだ

 ・ 何らかの意図によって、地図から抹消された


「でも、波は知ってるはずだよね……?」


 波は、世界中を巡っている。

 過去に存在したものの記憶も、きっとどこかに残っているはず。



 ◆波の声を聞く:故郷への道標


「クック……波……記憶……」


 オウムの囁きとともに、ゆりあはそっと水槽に手を添えた。

 その瞬間——


 ——ザァァ…… ザザァ……


 耳元で、波の音が深く響く。

 まるで、ゆりあの質問に答えるかのように——。


 ——静かな海の中。

 ——水底に広がる、"消えた島の残骸"。

 ——それは、かつてウミガメが見た故郷の一部だった。


「……沈んだの……?」


 ゆりあは、映像の中で見えたものを必死に整理する。

 ウミガメの故郷は、今もどこかに存在している——けれど、それは"水の下"なのかもしれない。


「クック……でも……まだある……?」


 ゆりあは、水槽のウミガメを見つめた。

 彼は、静かに目を閉じ、まるで何かを思い出すように漂っている。


「君の故郷が"消えてしまった"んじゃないなら……きっと、"まだ辿り着ける方法がある"はず!」


 ウミガメは、ゆっくりと瞬きをした。

 まるで、「そうだ」と言っているように見えた。



 ◆海の記憶:最後の手がかり


「……もう少し、調べてみよう」


 ゆりあは、古い地図のデータをさらに深く調べ始めた。

 もし、"かつて存在した島"が完全に沈んでいないのなら——


「満潮と干潮のタイミングによっては、まだ見える場所があるかもしれない……!」


 例えば、 月の引力の影響で潮位が変わるとき、

 一瞬だけ島の一部が顔を出す可能性がある。


「クック……満月……?」


「そう、満月の夜に……潮が引いたとき、君の故郷が見えるかもしれない!」


 ゆりあは、スマホで潮の満ち引きのデータを確認する。


「次の満月は……あと3日後!」


 そのとき、もしウミガメの故郷がまだ存在するなら——

 きっと、海の上にその姿を現すはず!


「……君の故郷を見つけに行こう!」


 ウミガメの帰るべき場所を探しに、ゆりあはついに"最後の手がかり"を掴んだ——!



 ◆次回「満月の夜—消えた島が現れるとき」

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