第2章:深海の星が奏でる光の詩

クラゲ編 第1話:光の海に浮かぶもの

 ◆ 夜の水族館に漂う光


 夜の水族館は、昼間の喧騒とは打って変わって、静寂に包まれていた。

 青白い光が、ゆらゆらと揺れる水槽。

 ゆりあは、水族館エリアの奥にある「クラゲの水槽」の前で立ち止まった。

 大きな水槽の中で、無数のクラゲが静かに漂っている。

 ふわり、ふわり。

 水の流れに身を任せるように、ただ揺れるだけの生き物。

 けれど、その姿はどこか神秘的で、目を奪われるほど美しかった。


「……すごい……」


 ゆりあは、思わず息を呑んだ。

 淡い光を放つクラゲたちは、まるで"水の中の星"のようだった。

 昼間の賑やかな水族館とはまるで違う。

 夜の水族館は、まるで別の世界に迷い込んだような不思議な空間だった。




 ◆ クラゲたちが見つめるもの


 ふと、違和感を覚えた。

 ——クラゲたちが、同じ方向に漂っている?


「……なんで、みんな同じ場所に集まってるの?」


 水槽の奥、ある一点に向かって、クラゲたちがゆっくりと流れていく。

 ただの偶然?

 それとも、"何か"がそこにあるのだろうか?


「クック……見てる……」


 オウムが、そっと囁いた。

 ゆりあは、ドキリとした。


「クラゲたち……何を見てるの?」


 ゆりあは、水槽の奥をじっと見つめた。

 けれど、そこには何もない。

 ただ、水が静かに揺れているだけ。

 でも——


 ——ザザァァ……


 不意に、耳元で"波の音"が聞こえた。


「……え?」


 水族館の中にいるのに、まるで海の波が打ち寄せるような音。

 ゆりあは、水槽にそっと手を当てた。

 その瞬間——

 水の奥に、何かが"ゆらめく"のが見えた。




 ◆ 水の奥にいる誰か


 ゆりあは、息を呑んだ。

 水槽の奥、そこに——"何か"がいる。

 人影?

 いや、違う。

 影はゆらめきながら、ゆっくりと近づいてくる。

 ゆりあは、思わず後ずさった。


「クック……見ている……そこにいる……」


 オウムが、小さく囁く。

 その瞬間——


 ——ザァァァ……


 また、波の音。

 それは、ゆりあの耳元で、はっきりと響いた。


「……あなたは、誰?」


 ゆりあは、水槽の向こうに問いかけた。


 すると——


 影は、ふわりと"手を伸ばした"。

 その手は、光に包まれて、まるで水と一体化しているようだった。

 ゆりあの心臓が、大きく跳ねた。


 "この影は、誰なの?"


 そして、なぜクラゲたちは、この影を見つめているの?




 ◆ クラゲたちが教えてくれる記憶


「クック……夜の記憶……」


 オウムの言葉に、ゆりあはハッとした。


 "夜の記憶"——?


 もしかして、この影は、"夜の水族館に残された記憶"なのだろうか?

 ゆりあは、クラゲたちをじっと見つめる。

 彼らは、何かを知っている。

 そして、それを"見せようとしている"。


「……教えてくれるの?」


 ゆりあが囁くと——


 ——スゥ……


 クラゲの光が、ひときわ強く輝いた。

 次の瞬間、ゆりあの目の前に"映像"が広がった。

 そこに映っていたのは——

 とても寂しそうな、誰かの後ろ姿だった。




 To be continued…

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