ビューティフル・ワールド

プロローグ

 朝6時になった。あちこちに設置されたスピーカーから、労働が始まる知らせの音楽が響き渡る。



罪を背負いし者たちよ

美しき世界は君を待つ

穢れを清め 許しを与えん

身を捧げ 心を捧げ

真実の民として生きる日まで



 毎朝毎朝この曲を強制的に聴かされながら、俺たちはいつも、労働をするための作業場に向かうのだ。




 最近の天気はどんよりと曇っているのがほとんどだったのに、今日は珍しく晴れている。

 久しぶりに太陽の光を浴びて、俺は思わず空を見上げた。



 どこまでも続いているように見える、真っ青な空。

 でもその下に広がるのは、何重にも囲われた高い高い電気柵。


 汗と錆びた鉄の匂いがして、そこかしこに腐敗した死体が転がっている。

 



 ここは、第5強制区画だいごきょうせいくかく――通称「第5区だいごく

 

 政府に反抗的な思想を持った者や、反乱分子、あるいは「不良市民」として認定された人々が収容されている、いわゆる”政治犯強制収容所”だ。

 

 ここで生まれ育った者たちは、政府の影響を全く受けずに育つことがほぼ不可能であり、教育も不十分。

 そのため、ここで生きる囚人たちは、外部世界に対する認識が非常に限定的である。


 


 これは、俺がこの第5強制区画から外に出るまでの話。


 そして、が本当に美しい世界を見つけるまでの、過程の物語だ――――。

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