梨美菜10点?

岩田へいきち

梨美菜10点?



「じゅ、じゅっ 10点?? 生物のテストがたったの10点だったの? 50点満点? 100点満点で?」


梨美菜は、黙って頷いた。


「じゃ、赤点なんじゃない?」

 

梨美菜は、またまた黙って頷いた。


マジなのか。


「マジ? 樹菜も勉強出来る方じゃなかったけど、60点くらいは取ってたよ。何かあったの? お腹痛かったとか? 女の子には、ぼくには分からない色々あるからね」


「ううん、化学も地理も悪かった。赤点スレスレ? 夏休みに宿題も何もしなかったらなんか勉強出来ない子になっちゃった。勉強あんまり興味ないし」


「ダメだなあ。勉強は一生必要だよ。バドミントンは、若い時の僅かな時間しかしないかもしれないけど、頭は一生使うし、基礎的なことは出来ないと自分じゃ何も出来ない子になっちゃうよ」



ここは、樹菜と梨美菜、家政夫としてぼく、ヒロシが一緒に住んでるアパート。姉の樹菜は、ここのバドミントンの強豪高校を今年卒業して、同じ県内の強豪実業団バドミントンチームに無事入団して、そっちの寮に住んでるから、今は、妹の梨美菜と2人っきりだ。その梨美菜がテストで10点を取ったとびっくりして事情を聞いているところである。



「そうなの? 生物とか化学とか使う?」


「まあ、信用しないかもしれないけど、何か壁に直面した時、これはどうしたら良いんだろう? と考えるでしょう。そして大体は、どうしたら良いか、ひらめいて対処出来てるでしょ? それはね、これまで勉強してきたことや考えたりしてきたことで足りてるから。でもこれから大人になったらもっと難しい高い壁、難問に出会うんだ。そんな時、高校生で学んだことや考えたことが役に立つんだ。そして、その解決策を賢い人は上手いこと考える。知識もなく、考えることも出来なくなったら、たくさん損をするかもしれないよ。ぼくやバーバやジージがスマホ持ってSNSなんかが上手く使えなくて苦労してるでしょ? そんな時どう思う?」


「バカだな。簡単なのに。もったいないと思う」


「そうでしょ。そんな感じ。梨美菜が勉強何もしなくて大人になったら、梨美菜、どうしてあんなことしてるの、バカなの? って言われて、実際にも損してるし、苦労する事になる」


「え〜、嫌だ。貧乏にもなるって事?」


「なるかもね? 今は、ママやパパが頑張ったお陰で梨美菜ものほほんと生きてられるけどね」


「ヒロシは? ヒロシは、頑張ったの? お金持ちなの?」


「あははは、勉強は、まぁまぁ、頑張ったつもりだけど、どちらかと言えば貧乏寄りかな? ママから給金もらってる」


「ええ〜そうだったの? ヒロシ、樹菜が好きだから趣味で家政夫してるとばっかり思ってた」


「ママからの給金は、大事なぼくの収入源だよ。それに樹菜は、もう一緒に住んでないじゃん」


「そっ、それは、樹菜よりもう梨美菜の方が可愛いと気づいたのかって思ってた」


「あははは、梨美菜は、ほんと充分可愛いよ」


「やった〜」


「樹菜も梨美菜もバドミントンやってるでしょ。シャトルには、羽が付いてるよね?」


「うん」


「あれ、何の羽? 分かる? ぼくもよく分からないけどガチョウって話しだ。じゃ、ガチョウってどんな鳥? バドミントンやっている梨美菜としては気にならない? 毎日、たくさんシャトル使ってるでしょう? あのシャトルには羽は何枚付いてる?」


「分かんない。数えたこともない」


「でしょ? ぼ〜と生きてたら、いざという時分からないし、使えない。この話だけで、梨美菜は、ガチョウを調べなきゃいけないし、シャトルも見直さなければいけない。オリンピック目指す選手なら、公式戦に使われるシャトルの構造や何の鳥の羽が正式だとかぐらいは知っておかなければならない。ガチョウしか使われないとしたら、ガチョウって、そんなに羽が生え替わる鳥なのかな? それ一枚一枚拾って集めるのも大変そうだよね? じゃ食べられてるね。日本ではあんまり食べてないみたいだけど、その辺りも気になってくるよね」


「ええ~っ、羽とるために食べてるの? そっか」


「ねっ、勉強しないといけないことたくさんあるでしょう? 今は、ネット詮索とか出来るから調べたりするのも簡単になってるけど、昔は

勉強してなくて、何も知らなければ、調べることも出来なかったんだ」


「ああ、ヒロシ昔話禁止〜、長くなる」


「分かった、わかった。もう一つ聞いて。ヤンバルクイナって鳥、知ってる?数十年前に沖縄で発見された鳥なんだけど」


「ヤンバルクイナ? 知らない。その鳥の羽もシャトルに使われているの?」


「違う、ちがう。ヤンバルクイナに翼はないんだ。飛ぶことをしなくなったから翼がなくなったんだ。梨美菜も勉強しなくなって、頭使わなくなったら頭無くなっちゃうよ。そんな可愛い顔してるのに、無くなっちゃうんだよ、梨美菜の頭。キスも出来なくなる」


「え〜、やだ。ヒロシの意地悪」


「あははは、ごめん、ごめん、冗談、冗談。そんな可愛い梨美菜の顔がなくなる訳ないじゃないか」


「分かった。勉強する」


「はい、ママには、ぼくから連絡しとくよ。梨美菜は、心入れ替えたから許してやってねって」


「よろしくお願いします」


「じゃ、おやすみ。話してくれてありがとう」


「おやすみ〜」




◇◆ ◇




「梨美菜おはよう。ママから命令出たよ」


「え〜、なんて?」



「『毎日、なんでもいいから学校で勉強した事や自分で調べたりして分かったことをヒロシに報告して。間違えていたらヒロシに直してもらいなさい。これはママの命令よ』だって」



「ひぇ〜、きつい」


「ママの命令じゃ、しょうがないね。ぼくは、毎日、梨美菜から話しかけられると思うと嬉しくてたまらないけどね。ママ、ナイスな命令だ」


「ヒロシ、やっぱり梨美菜のことが?」


「じゃ、早速、今夜から話聞くね」



「 昔話は、少な目にね〜。行ってきま〜す」




終わり


(このシリーズ、お題が出るまで進みません。次のお題が出るのは来年かな?)

ヒロシの今現在の修行料理載せました。美味しかったです。樹菜ちゃんが一番に良いねくれました。梨美菜ちゃんは、まだ知らんぷりです。

https://kakuyomu.jp/users/iwatahei/news/16818093093274247733

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