モンシロチョウが語り手の本作。その語り口調の面白さに乗せられて、また、特徴的な四匹のチョウたちの魅力にひかれて読み進めておりますと、「おお、なるほど!」と思わず唸るようなオチ……かと思いきや「えっ、そういうことだったの!?」と思わず驚愕するラスト。
慌てて読み返してみましたが、作者様が仕掛けた言葉の数々が嫌と言うほど飛び込んできました。
その言葉の一つ一つが結びつけられていく度にまたもや驚愕。
しかし、謎が解けていくとともに、それまで驚かれていた私の心は、これほどのものを読めたことへの感謝の気持ちへと浄化されるに至りました。
童話、ミステリー、SF、コメディ……ともかく色々なジャンルが完璧に混ざり合った怪作です!
是非ともご一読を!
まず、蝶というモチーフの使い方が超すごいです。
バタフライエフェクトという言葉だけで、蝶に人間っぽさを持たせて、独特な世界観に運んでくれるこの感じがたまらないです。
昆虫が好きな自分は満足ですし、昆虫が好きじゃなくても最高です。
推理あり、ファンシーあり、コメディあり、起承転結もしっかりしていて、文章も読みやすい、なんかいいところしか見つかりません。
チョウたちが風刺じみたほら吹きしあってる。
そこの皮肉めいた視線も鋭すぎる。
なんか蝶のくせに、人間を見ているみたいで楽しいです。
バタフライエフェクトを題材にしているものは世の中に存在していますけど、これだけ広げること、しかも短編でコンパクトにまとめること、どっちもできるなんてすごすぎます。
この作品があまりに素晴らしいので、他の作品もきっと素晴らしいし、文章力、ストーリー作成の能力も高いんじゃないかと期待してしまいます。
これだけ楽しい短編を読むと、作者さんの今後の短編へのハードルが上がりそうでそこだけが怖いです。
世界観素晴らしいですし、すごい発想で楽しかったです。
こんなことを思いつく人がいるでしょうか?
よくある教養の扱い方もとても上手で、そうくるかと驚きっぱなしでした。
しかも、再度教養の勉強にもなりました。
大人になると、そういった教養を忘れがちなので、懐かしい気持ちにもなりました。
自分としてはだいぶ、この作品のすばらしさを語っているつもりですが、
こんなシンプルなたとえしか思いつきません。
ショートショートの神様、星新一さんの作品を見ているような気分になりました。
オチがなんといっても素晴らしい。
短時間の読み物なのにすごく濃密でした、ありがとうございました。
それから、想像がどんどん膨らんで幸せでした。
蝶になってみるという疑似体験は最高でした。今後も楽しみにしています。
バタフライエフェクト。
それは、北京で蝶が1匹飛ぶと、その小さな気流が数ヶ月後にアメリカに嵐を起こす可能性がある。と言うやつだ。
それを間に受けた蝶々達が、ありがた迷惑にも人間の文明を、自らのバタフライエフェクトによって崩壊させようと試みた。
経済を崩壊させるもの。
生態系を破壊するもの。
闇雲にスカートを捲るもの……
もちろん、たかが蝶の1匹で人間の文明が崩壊するはずがない。
いや……『はずがなかった』
衝撃のラストはご自身の目で見届けてほしい。
……ところで、黒澤カヌレ先生は、この物語の続編の構想中であり、
色々あって●●●●年にタイムスリップしたのちに、
さらにそこから異世界に転生する因子となり、
蝶から海老に変身する。
「蝶の羽ばたきよりか! 油で揚げられている時のエビの勢いの方が強い風圧が出る!
これからは エビフライエフェクトだ!!」
と言うセリフの後で、エビフライを食べた人間の健康状態を破壊し、プリン体を増殖させて主に足に激痛を走らせる。
「思い知ったか。これが『痛風』だ!」
……という物語の近日公開を控えている。先生の活躍に期待したい!!
この作者様、どの作品も斬新なアイデアと精密機械のような構成で全くハズレなしの良作ばかり書かれるのですが、この作品の衝撃度は私の中で断トツでした。
最初は蝶々さんたちのほのぼのとした、児童文学かコメディのような展開にクスッと笑いながら。
でも終盤になって「あれ……」と言う空気感となり、作者様の緻密な構成と描写にどんどん鳥肌が……
そして、クライマックスからラストで言葉を失います。
私は息を呑んで言葉を失いました。
作者様がその方向の作品として書かれてなかったら本当に申し訳ないですが、私は恐ろしさに鳥肌が立ちました。
その壮大さと世界の激変に。
何と言うか……え? なんでこんなレベルのを量産出来るの!?と。
作者様は「パルメザンのちっぽけな祝福」と言う、これまた凄みさえ感じる傑作を書かれてるのですが、それが完結してすぐにこのレベルの!?
もう私には理解できません……(汗)
バタフライエフェクトを題材にした小説。
日本語で言いかえると、「風が吹けば桶屋が儲かる」になります。
些細な出来事が、最終的に全く想定していなかったような出来事に行きつくことをいうのですが、今作の主人公の蝶たちは、そのバタフライエフェクトを自分たちで意図的に起こそうとします。
この蝶たちがみんな個性的で、会話が面白くて、すらすらと読めてしまいました。
物語の中盤らへんで、ある男が突然シャツを脱ぎだすのですが、そのシャツを誰がどうやって脱がせたのか、蝶たちの推理によって後付けで嘘の理屈を付けていく、虚構推理のようなことが行われます。
これがとてもよくできていて、面白いです。
結局、誰がその男のシャツを脱がせたことになるのか、それは皆さまの目で確かめてください。
また、男のシャツを脱がせた蝶が誰か決まった後、更なる予想外の展開が待ち受けています。
きっと最後まで読めば、あっと驚くことになると思います。
そして、気づくことになるでしょう、
何気ないシーンから始まった本作が、最終的に予想外の結末へと終着する、そう、題材だけでなく、この物語の構成すらも、まさしくバタフライエフェクトだったことに。
この計算され尽くした珠玉の作品を是非読んでみてください。