夢崎 醒

第1話

「夢香、結婚するんだあ」


 煙草を蒸しながら、夢香はそう言った。


 僕のアパートのベランダは、喫煙所と化していた。

 

 彼女は、いわゆる幼馴染というもので、よく僕のアパートに転がり込んでは、煙草を蒸している。


「へえ、そうなんだ」


 朝方。暑さが尾を引く。


 僕はベランダの柵にもたれたまま、息を吸った。


「それだけ」


 と、ベランダにしゃがみ込み、夢香。


「それ以外、なくね」


 僕は言った。


「てか、何人目の彼氏だよ、そいつ」


「ええ、わかんないや。でも、今までの中で一番いい人。夢香に優しくしてくれるの」


 二ッ、と夢香は笑った。


 朝日が、頭頂部だけ黒くなった金髪を、明るく染めた。


 赤い額が、気になった。


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