第2話
主人公としての立場にいるあいつから逃げ出す事に成功したとはいえ、しかし今後の事を考えると状況は極めて絶望的と言えるだろう。
間違いなく主人公であるあいつは世界を救った英雄であり、その一言は文字通り国の流れを動かす事が出来る。
お涙頂戴とは良く言ったものだが、あいつが「そう」言えば瞬く間に俺はこの国全体の敵へとなってしまう。
そして、それをしない理由があいつにはない。
その可能性は極めて高いような気がするし、だからこそ正直に言ってつんでいるのかもしれない。
だが、それでも主人公を騙るあいつの手に堕ちてそのまま死ぬというのもなんだか悔しい。
敗走するのは良いけど、そのまま敗れてこの世を去るというのは絶対に嫌だ。
だから何としてもこの後も生き延びる必要があり、だからこの国から隣国へと抜け出そうと思っていたのだったが。
「まあ、そう簡単にはいかないよな……」
当たり前だけど国と国との間には関所があり、そこで身分を明かさなくてはならない。
……逃げてきたばかりだからあいつの言葉がここに届いていない事を懸けるか?
いや、ここでギャンブルするのも分が悪い。
いっその事強行突破――いや、それをしても結局結果は変わらない。
正攻法で堂々隣国に逃げなければ、そうでなければ犯罪者として逆戻りする事が確定してしまうだろうし。
「……」
どうする、レクス?
簡単な変装、偽装は意味がない。
正攻法で逃げなくてはならないと言った手前でなんだが、ぶっちゃけ既に正攻法で逃げ出せる手段が思いつかない。
もう、勢いに任せて突っ走ってみるか?
いや、でも――
「……!」
と、そこで。
背後に、気配。
まさかもう追手がやってきたのかと思い剣に手をかけ迎撃する用意をしつつ、振り返る。
そしてそこにいた、間違いなく俺が目当てであろう相手の表情を見、驚き、そして絶望した。
「せ、聖女様……」
旅の仲間の一人。
聖女、レインがそこにいた。
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