第五話 強引な後輩

 さて、ご飯でも食べに行くかな。

 でもその前に椎名の教室に迎えに行ってやるか。

 

「せんぱ~い!! ご飯食べに行きましょ~!!」


 声のする方を見ると、走っていたのか息を荒らしながら後方の扉からバカでかい声で椎名は言い放った。

 知らない人知らない人……。

 僕はそそくさと前の扉に急いでいき、出ていく。

 

「先輩?」

「人違いです」

「もしかして、先輩は二人いるとか!?」

「ここの階層は全員先輩だな」

「じゃあ、貴方は春風柊真先輩で合ってますか?」

「いいえ」

「ふ~ん、じゃあ教室で春風先輩に置いてけぼりにされたって言いふらそ~っと」

「やめてください、お願いします」


 こいつなら本当にやりかねないのよ。

 実際にそんなことされればクラスの印象は最悪だ。

 可愛い後輩の誘いを陰キャが断ったというのがもし知れ渡れば下手したらいじめに発展するのだから。

 

「やっぱり先輩じゃないですか!! 私を騙しましたねぇ~!!」


 わかっててあえて言うのが性格わりぃ~。

 ムッとした表情で見つめてくる。


「騙してない」

「騙したじゃないですか!!」

「騙してない」

「騙してました!!」

「いいか、椎名は先輩としか言っていなかった。 ここまではいいな?」

「はい」

「この階に一年生はいるか?」

「いませんね」

「だったら、お前が誰を呼んでるかなんてわからないはずだ」


 どうだっというと、椎名がムムムッっと更に頬を膨らませる。


「先輩、それって屁理屈って言うんですよ?」

「屁理屈なもんか、実際椎名は。 これが事実だ」


 これを覆す事など出来ようか?

 否!! 

 出来るはずなどない!!

 

「でも先輩、春風柊真先輩ですか?って聞いて「いいえ」って言いましたよね?」


 ……あ。


「それは、その……うん、「いいえ、僕は春風柊真と言います」って言おうとしたんだ」

「それ、無理過ぎますって……」


 呆れたように椎名は見てくる。

 自分だってわかってるからそんな目で見るなよ後輩。

 

「あんな大声で呼ぶなよ恥ずかしい」

「恥ずかしい?」

「いきなり可愛い後輩が教室に来て大声で呼ばれるなんて恥ずかしいじゃないか」

「……え? 本気で言ってます? いやいや、男子はこういうの喜ぶんじゃないですか?」


 信じられない者をまるでUMAとか未知を発見したような表情でこっちを見てきた。

 大抵の男子は確かに喜ぶだろう。 

 椎名みたいな可愛い女子に迎えに来られたら絶対に嬉しいに決まってる。

 だが内心は陽キャならいざ知らず、僕のような陰を生業としているような男は恥ずかしいのだ。

 

「他の男子はともかく、僕は恥ずかしい」

「なんでですか?」

「目立つのが嫌なんだよ、椎名みたいな可愛い女の子が来ると正直目立つ」

「……そうですか、でしたらご飯もやめときましょうか?」


 冷たい目つきで明らかに怒気を含んだように僕に行った。


「椎名がそうしたいならそうしよう」


 僕がそう言うと、椎名は冷たい瞳で先に行った。

 嫌われたかな。

 そうして僕は券を買うと一人隅でボッチ飯をするのだった。




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作者より

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