第四話 後輩との登校

「おはようございます!!」


 いつものように登校していると、椎名が声をかけてきた。

 

「おはよう、奇遇だな」

「はい、待ち伏せしてましたから!!」

「それ奇遇じゃないだろ、全く」

「細かい事はいいじゃないですか。 それより先輩、今日から一緒に登校してもいいですか?」

「別に構わないよ」


 僕の言葉に嬉しそうに「やった!!」っと微笑んだ。

 そんなに嬉しい事か?


「朝から元気だな、椎名は」

「そうですか?」

「うん、僕なんてこれから学校なんて憂鬱で憂鬱で……」


 振られた件で胃がキリキリと痛む。

 あの件で黒井さんに距離を置かれたり、クラスの陽キャ共に弄られるのではないかという不安で正直行きたくない。

 

「あ~、どうせ振られた件で黒井さんやクラスの人に弄られるんじゃないか?とかそんな風に考えてるんですねぇ~」


 何だお前、僕の心が読めるのか?

 っというか、自分で思うのはいいが、こいつに言われると余計に行きたくなくなった。


「今日はもう休もうかな」

「駄目ですよ、学校はちゃんと行かないと。 例え振られた件を学校中に言いふらされたとしても、学校は将来の為にいかないと駄目です」

「少しは慰めろ、傷を抉ってどうする」


 飴鞭じゃなくさっきから鞭鞭じゃないか!!


「とにかく、行きましょう。 私が手を握っててあげますから」

「お前は母親か!!」


 っというかこっちの方が恥ずかしいわ!!

 後輩に手を握られ連れてこられる二年生とかいやすぎる。

 そっちの方がむしろ心に来る。



「行く、行くから手を放せ!!」

「……本当ですか?」

「あぁ、行くから、とりあえず恥ずかしいから手を放してくれ」

「仕方ないですね……」


 そういうと彼女は手を離すと歩き出す。

 

「行きますよ、先輩」


 ん?なんか怒ってる? 

 少し頬を膨らませ、不満そうに唇を引き結んまるで子供が拗ねているかのように目を細め、その瞳にはわずかに怒りの色が宿っているように肩をすくめるように歩き出す姿に、彼女の内心の苛立ちが垣間見えたように思えた。

 そのまま無言で歩き出す。

 いつもなら彼女は無限のマシンガントークをしてくるはずだ。

 やっぱり怒ってるのか?

 とはいえ、何に怒っているのかわからなかった。

 学校にはちゃんと行くといったし、怒られる理由がわからない。


「椎名?」

「はい、何でしょう?」


 うん、この感じ、怒ってるな。

 笑顔が怖いんよ。

 

「先輩、昼ご飯は食堂でボッチ飯ですか?」


 椎名はこっちに視線を向け失礼極まりない事を言い放ってくる。


「ボッチ飯って決めつけるな」

「先輩、いっつも端でポツンといますよね」

「おま、なんで……」

「やっぱり、そうなんですね」


 しまった、こいつ嵌めやがった!!


「でしたら、お昼奢ってください」

「……なんで?」

 

 椎名に問いかけるが無言の圧を掛けてきた。

 

「わかったよ、わかったいから睨むな」

「だったらいいです。 でしたらお昼休み一緒に食べましょ」


 気を取り直したようにご機嫌になった。

 情緒不安定かよ。

 


 


 


 


 

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