第37話
「若造が。お前になにができる」
「世の中をなめすぎだろ」
晴仁は顔を歪めて吐き捨てる。
「親子間でも暴行傷害罪は成立する」
「こいつのケガは夫のせいだからな。つまり、お前だ」
達弘は悠々と言う。
「お前たちがやった証拠はある。逃げられると思うな」
「証拠か、見せてみろ」
達弘の嘲笑を無視して、晴仁は紅愛をにらむ。
「そのスマホは彼女のものだ。窃盗で捕まりたくなければ返せ」
「預かってただけよ」
ふてくされた紅愛が差し出すと、晴仁はスマホをひったくった。いくつか操作して音声を再生する。
『DVならケガさせておかないとね』
『それもそうだな』
『あんたなんか大っ嫌い!』
『うじ虫の方がまだ世の中の役に立ってるわよねえ』
会話の合間に、殴る蹴るの音がはいっていた。
「いつのまに録音なんて!」
紅愛が呆然と呟く。
晴仁はにやりと笑う。
和未のために遠隔操作アプリを入れていた。
彼女が実家にいると気付いた瞬間、遠隔操作で録音を開始した。同時に通話状態にして彼女がどんな仕打ちを受けているのかを聞いた。あまりのことに車中で叫びそうになったが、気取られるわけにはいかないので必死に耐えた。
「プライバシーの侵害よ!」
「自分の意志での録音や、不正の証拠をつかむための録音は罪にならないとされています。特に今回、自分の会話ですからね」
遠隔操作とは知らない弁護士が言う。
「お前は誰だ! 勝手に入ってきやがって!」
「弁護士の
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