煙と市場と喧噪 古のロンドンを歩くようなファンタジーへようこそ

王都の描写は、まるで昔のロンドンを思わせる臨場感に満ちています。
市場の活気や煙突掃除の少年たちに加え、輸出茶や船舶保険が物語に自然に組み込まれている点も見逃せません。都市の生活感だけでなく、世界経済の潮流までもが背景に漂う——そのリアリティが舞台をより確かなものにしています。
また作中で描かれる〈連棟式住居〉は、現在もロンドンに残る“ハモニカフラット”を思わせる構造で、当時の都市生活の空気感がリアルに伝わってきます。

この作品は、ただのファンタジーの街ではなく、現実に根ざした社会背景をもつ舞台として立ち上がるところに惹かれます。
19世紀イギリスの光と影をお好きな方にお勧めしたい一作です。

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