96話 母親と彼女達(中)
(ピーンポーン)
俺と母さんが部屋で待っていると、チャイムの音が聞こえて来た。
「あ、来たみたい。それじゃあ連れて来るから母さんはここで待ってて」
「分かったわ」
「あと昨日も言ったけど、春香は大丈夫だと思うけど、愛、特に沙羅は凄く緊張しているみたいだからその辺も良い感じに宜しく」
「それも分かってるわよ」
すっごいアバウトに言っているけど、こういっておけば母さんだったら大丈夫だろう。
俺は母さんにそう言って玄関へと向かった。
(ガチャ)
「いらっしゃい三人共」
「悪琉!来たよ!」
「こんにちは悪琉」
「こんにちは……」
三人の様子を見るに、やはり昨日の学校と大差はなさそうだ。
相変わらず楽しそうで元気な春香。
大丈夫そうに振る舞っているけど、心配そうにちょっとそわそわしている愛。
緊張や心配が目で見て明らかに表れている沙羅。
まぁでも多分だけど、母さんと話してみたら緊張するのは最初だけになるんだろうと思うから大丈夫かな?
母さんの性格的にも初対面の人と馴染むのが早いって事もあるし。
「まぁ、とりあえず家に入って。母さんはもう居るからさ」
「うん!ありがとうお邪魔します!」
「「お邪魔します」」
そうして俺は三人を母さんが待っている部屋へと案内を始めた。
◇
「この部屋に居るから準備は大丈夫か?春香は大丈夫そうだけど、愛と沙羅」
「私は大丈夫よ、正直に言うとちょっとだけ緊張はしているけど、問題があるほどじゃないしね」
「私も大丈夫……だと思う」
「二人とも大丈夫だって。私がついてるからね」
「それじゃあ行くか」
(ガチャ)
俺が部屋のドアを開けると、母さんが椅子に座って待っていた。
「母さん連れて来たよ」
俺がそう言うと母さんが椅子から立ち上がって言った。
「えっと、春香ちゃんと愛ちゃんと沙羅ちゃんだよね、いらっしゃい。私は佐野灯って言うから呼び方はなんでも大丈夫よ」
母さんがそう微笑ながら言うと最初に口を開いたのが春香だった。
因みに、母さんにはあらかじめ三人の写真を見せてあったので、顔と名前はちゃんと一致している。
「はい、よろしくお願いします!私は七瀬春香です!おかーさんから話を聞いていた事もあって今日会えるのを楽しみにしていました!!!えっと、灯さんって呼んでも大丈夫ですか?」
「勿論その呼び方で大丈夫だよ。私の方も香織ちゃんから春香ちゃんの事は聞いていたし、悪琉ちゃんからも聞いていたから会えるのを楽しみにしてたよ。あ!勿論春香ちゃんだけじゃなくて、愛ちゃんと沙羅ちゃんに会える事もね」
母さんはここまでずっとニコニコしながら穏やかに話している。
そんな母さんを見てか、愛と沙羅の緊張は少し落ち着いているように感じられる。
「ありがとうございます。私は矢野愛ですよろしくお願いします。私も凄く楽しみにしていました。」
「わ、私は相沢沙羅です……よろしくお願いします。悪琉君のお母さんに会えて凄く嬉しいです」
「まぁ三人共そう思ってくれていたのだったら嬉しいわ。さ!とにかくいつまでも立たせておくわけにも行かないから、悪琉ちゃんも皆も座ってちょうだい!」
「そうだな。それじゃあ俺はこっちの座るから三人はそっちに座ってくれ」
「分かった!座ろう二人とも!」
「そうね」
「うん」
そうして俺は母さんの隣に座り、その対面に三人が腰を下ろした。
「それにしても、真理ちゃんも香織ちゃんもそうだけど、皆本当に美人でびっくりしたわよ。写真で見るよりもずっと可愛いんだから」
「えへへ、ありがとうございます。でも灯さんだって当絶美人ですよ!」
「そうですよ、灯さんも凄く素敵です」
「私もそう思います!」
「ふふふ、本当に可愛い子達ね悪琉ちゃん」
三人が母さんにそう言うと、母さんは嬉しそうに笑って俺にそう言って来た。
「まぁ、そうだね」
「それじゃあもっと三人の事を教えてくれるかしら?」
「勿論良いですよ!!」
「「分かりました」」
その後三人の事を母さんに話した後、今度は三人が俺の事を母さんに話したりしていたのだが、思った以上に気恥ずかしさがあってちょっとだけ気まずさを感じていたが順調に顔合わせは進んで行き、最初は緊張している様子だった愛と沙羅も次第と楽しそうに話すようになっていた。
◇
「ふふふ、そんな事があったんだね」
「はい!そうなんですよ!そんな訳だから私たちは悪琉の事が本当に大好きなんですよ!ね、愛ちゃん沙羅ち!!!」
「うん!そうだね!」
「まぁ、そうね……」
今は春香を中心に俺の事をずっと褒めまくった後に、助けられたことなどを話して盛り上がっていた。
でもやっぱり自分の母親の前で、彼女からこんな事を言われるってのはまだ慣れそうにないな。
「悪琉ちゃんったらずっと黙っちゃってどうしたの?」
俺がそんな事を考えながら黙っていると母さんがそうニコニコで言って来たけど……これ、黙っている理由を分かっている顔だな。
「いや、俺の事を話されているから話しづらいだけだけど……大体三人共ほめ過ぎだって……」
「えー!悪琉ってばもしかして照れてるのー?」
母さんに続いて春香も揶揄うようにそう言って来た。
ていうか、あれだけ褒められて照れない人がいる方が珍しいと思うんだけどな……三人は俺がそう思えるほどには俺の事を褒めちぎっていた。
「そんな事は別にないけど……」
「春香、揶揄うのもほどほどにね」
「ふふふ、そうだよ春香ちゃん」
「ははは、分かってるよ」
「三人共本当に仲が良いんだね」
「そうなんです!さっきも言いましたけど、私達って幼稚園の頃から一緒に過ごしてきましたから!」
「そうですね。そういう意味では本当に心の底から信頼しあっていますね」
「はい、私も二人の事は大好きですから」
「まぁ、三人は出会った時からこんな感じだったよな」
「そうなんだ。聞いていた通りだけど安心したわ」
母さんがそう呟くと愛が尋ねた。
「安心ですか?」
「えぇ、悪琉の彼女達が良い子って事も当然そうだけど、何より真理ちゃんや香織ちゃんも含めて皆が仲良しで良かったなって意味かな」
「なるほどそう言う事ですね……」
母さんがそう言うと、三人は納得したような顔になった。
まぁ、この母さんの言葉の意味を分からない人はこの世界には余りいないだろう。
この世界は一夫多妻制ではあるけど、中には恋人または夫の一番でいたい……他の彼女が居たとしても自分が一番がいい、そう思う人だって少ないとは言えない。
多くない事例で言うと、表では中の良い振りをしていても裏では喧嘩や牽制をしたり、酷い所だと嫉妬で事件に発展してニュースになるって事すらある。
「まぁ、私たちは悪琉も皆もお互いに大好きですから!!」
「そうね、私も皆大切だと思ってるわ」
「そうだね!当然私も同じ気持ちだよ!!!」
「ふふふ、それじゃあこれからも悪琉をよろしくね!春香ちゃん、愛ちゃん、沙羅ちゃん」
「「「はい!」」」
「そういえば、もうこんな時間ね……もし良かったら三人も一緒に夜ご飯を食べる?」
「良いんですか?」
「もちろんよ」
「それじゃあお言葉に甘えて、頂きたいと思います!!」
「「ありがとうございます」」
それから俺たちは五人で食事を楽しんだ。
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