終わらない地獄――湯気の中で翻弄されて
「久我くん、目がとろーんとしてるよ! やっぱりお風呂でリラックスしてるときが一番かけやすいね!」
彩花の明るい声が浴場に響き渡る中、政宗は湯船の端にぐったりと座り込んでいた。
(くそっ……なんで俺、またかかってんだよ……!)
女子たちが次々と催眠術を仕掛け、政宗はそのたびに抵抗しようとするが――。
「ねえ、久我くん、リラックスして湯船に浸かってみて!」
「気持ちよくなればなるほど、もっと集中できるよ!」
耳元で甘い声が囁かれたり、無防備な姿が視界に入るたびに、彼の集中力は崩壊する。
(平常心を保とうとしてるのに……こいつら、ズルすぎるだろ!)
肩を揉まれたり、目をじっと見つめられたりするたびに、政宗はあっさりと催眠状態に引き込まれてしまうのだった。
「やっぱり耳元で囁くのがいいみたいだね!」
「でも、目を合わせるのも効果的だよね~。」
「久我くん、すぐに真っ赤になってたし!」
女子たちは楽しそうに試行錯誤を続け、まるで催眠術の研究会のような雰囲気になっていた。
「久我くん、今度は私の番だからね!」
クールな凛音が静かに近づき、政宗の耳元で低い声を響かせる。
「ほら、目を閉じて。そのままリラックスして……。」
凛音の落ち着いた声に、政宗の瞼はすぐに重くなり――。
「くそっ……また……かかった……!」
政宗は心の中で悔しさを叫びながら、またしても深い催眠状態に陥った。
「よし、今日はこのくらいにしておこうか。」
彩花が手を叩いて声を上げると、女子たちは名残惜しそうに湯船から上がり始めた。
「お風呂だと、本当にかけやすかったね!」
「うん、やっぱりリラックスしてるときが一番効果的だね!」
「久我くん、協力ありがとうね!」
「おかげで練習がすっごく上手くいったよ!」
楽しそうに声を掛け合いながら、女子たちは一人、また一人と浴場を後にしていく。
湯船の中に残された政宗は、疲労と虚無感で動けなくなっていた。
(なんで……こんなことになったんだよ……。)
周囲が静かになると同時に、湯気の中に漂う孤独感が彼を包み込む。
(確かにハーレムだけど……これ、普通に地獄じゃないか……?)
力なく湯船の縁に頭をもたれさせながら、政宗は心の中で女神を呪った。
「俺の転生ライフって……マジでなんなんだよ……。」
しかし、その疲れ切った呟きは湯気の中に消えていった――。
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