第7話 重くて、気まずくて

 玄関で、ようやく朱音に追いついた。2人で並んで靴を履き、校舎から出る。

 今までなら、たわいないことで笑いながら2人で歩いた道。今日はどちらも口を開かなかった。

 どこにいくのかわからないまま、朱音の半歩後ろを歩く。


 学校の敷地を出て、左に曲がる。そのまままっすぐ進んで大通りの交差点を右に。歩道橋を通って反対側に渡る。そのまま直進して、2つめの角を曲がって狭めの路地に入る。そこを抜けると、夏休み前に2人で行ったクレープ屋の看板があった。

「え? 」

 私は困惑して、ついその場で立ち止まった。

「つむぎ、いくよ」

 朱音は私が止まったの気がつくと、こちらに戻ってきて、私の手を取って店の前まで来るとそのまま扉を開けた。


 閉店まで後1時間半ほどの店内は、前回と違って空いていた。


「すみませーん、2人で予約した櫻庭なんですけどー」

 朱音がレジにいた店員に声をかけた。

 何やら確認を済ませた店員は、こちらへどうぞと言いながら、店の1番奥にある端の席へと案内した。


 朱音と向かい合わせになって座る。私は、目の前の朱音の顔を見つめることができずに、机に置いてある注文の仕方と書かれたラミネート加工のほどこされた紙をただひたすらに見つめていた。


 原因が私にあることはわかっていた。私が勝手に怒って、イラついて、勝手に避けていたのだ。いくら、少し鈍いところがある朱音でも、そんなんことが1ヶ月も続けば気づかないわけがない。

 朱音に謝るべきだと思った。ごめんと言えばいいだけなのに、私はなんと言って謝ればいいのかわからなかった。


 もう、注文の仕方の紙を5回読み終えた時、いきなりずいとメニュー表が出された。びっくりして顔をあげると、真剣な目をした朱音がこちらを見ていた。


「はい、つむぎ。私、何頼むか決めたから。なんでも頼んでいいよ。今日呼び出したのは、私だし、待たせちゃったし、私の奢り」

「え、でも… 」

「でもじゃなくて、いいから頼んで」

 断ろうとしたら、いつもよりも少し強い口調で言われて、慌てていつものイチゴクレープを選んだ。

「すいませーん」

 そう店員を呼んだ朱音は、店員が去って2人きりになってもただだまって窓の外を眺めていた。

 私は、どこを見ればいいのかわからなくて、また注文の仕方の紙を眺めていた。

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