第4話 イライラの矛先
その日から、私は朱音のことを少し避けるようになった。2人だけで行動することが減った。
毎年、夏休み期間は一緒に勉強していたけれど、今年は塾が忙しくなるからと断った。
もちろん、息抜きに遊びに行こうと言われた時は一緒に行って、夏祭りも楽しんだけれど受験勉強を理由に去年よりも時間は短かった。
もともと、四六時中一緒にいるわけじゃなかった。それでも、2人だけで何かをすることは確実に減った。
朱音は悪くない。朱音は何も悪くない。私が自分に失望して、勝手に怒っているだけ。頭ではそうわかっていた。
それでも、朱音の顔を見るとどうしてもイライラしてしまう。八つ当たりだとわかっているけれど、どうしようもできなかった。
8月の、お盆明け。また夏期講習が始まった。クラスメイトはインハイのお土産を配っている人、黒く焼けた人などそれぞれの夏を満喫したようだった。
久しぶりに見た朱音は、何も変わっていなかった。真っ黒に日焼けしているわけでもなかったし、どこかに旅行にいった様子もなかった。
何も変わっていない姿をみて、どこか安心する自分もいたけれど、イライラしている自分がいるのもまた事実だった。
私は、つい朱音に冷たくしてしまう。
「つむぎ、学食いこ! 」
それでも、朱音はいつも通り話しかけてくる。
「いや、今日はいいかな、金欠だし」
私は、つい断ってしまう。
「おっけー、わかった」
朱音はなんでもないことのように答えた。
ちょっといってくるねと言葉を残して、学食へかけて行った。
悪いことしたな、という気持ちが自分の内側に広がっていくのがわかった。
実際に、気分じゃなかったし、いつもよりお金を使いすぎなのも事実だった。
それでも、それは言い訳にしかならなくて、自分の中に広がる罪悪感を拭い去ってはくれなかった。
そんなことを考えたくなくて、今まで以上にがむしゃらに勉強した。毎日行っていた塾にもっと長い時間いるようになった。もっと長い時間勉強するようになった。
それでも、なかなか成績は上がらなかった。
夏休みの後半には、模試が3つあった。
そのどれも、今までより手応えがあった。自己採点もよかった。それでも朱音より点数は低かったし、クラス平均も今まで以上に高かった。
夏休み明けのテストは散々だった。周りだって勉強しているのはわかっていたけれど、今までで1番ひどい出来だった。
そんなにすぐに成績が上がらないのはわかっていた。知識としても、経験としても知っていた。それでも、周りの人がテストのたびに点数上がったと言っているのを聞いて、焦りが募った。私だけが、おいてけぼりのような気がした。
朱音は、どんなテストの時も余裕そうだった。
それが、また私をイラつかせた。もっと上の大学だって狙えるはずなのに、狙わないのに腹がたった。
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