第3話 脳の中の思い込みが罠の餌♡

「え?だれ?」

ミツキは先ほどの爽やかな顔から一変して苦々しい表情へと変化した。


「アオイ!」

 ミツキとは逆にひなたの顔は緊張がほどけてホッとした柔らかい表情へと変わる。


「どうも、ヒナタと結婚の約束をした者です。失礼ながら後ろで話を聞かせていただいていました」


 ミツキはギッとイブキを睨む。


「ち、違います!ちゃんと『一人で来て』って言いました」

 縋るような目でイブキはミツキを見る。


「ふぅぅ…ではヒナタさん…は『やらない』のね?」

 ヒナタはアオイをチラッと見てから

「すいません。やりません」

 ヒナタは申し訳なさそうにミツキに言う。


 ミツキはため息を一つついて

「わかりました。では次の時間もあるので失礼します。イブキさん、じゃ、また」

 ミツキは鞄をバッと取ると速足で店を後にした。

「す、すいませんでした!!」

 イブキは訳が分からない状態でミツキに頭を下げた。


 アオイがヒナタとイブキの向かいの席、先ほどまでミツキが座っていた席に座る。


「ヒナタ!一人でって言ったじゃん!」

「ヒナタを責めるのはやめて。心配で勝手に来ただけだから」


 アオイがヒナタを庇う。


「でイブキ、羽毛布団だっけ?本当はどうなの?儲かってるの?」

「こ、これから…これから!だね。まずは命令ノルマの10枚を売り上げたらそこからはトントン拍子になる!」


 アオイに言われてイブキは焦ったように答える。


「うん、イブキ…見事なマルチ商法だよ。今までのお金は勉強代だったと思って今すぐやめた方がいい」

「な、何言ってるの?違うよ?ミツキさんは凄い人だし、ちゃんとお金も入ってきたし!」


「うん、ミツキさんはスーツもビシッと着ていてブランド物もサラッと身に付けて身なりもちゃんとしている。なんてちょっと凄そうな肩書を言われたら信用できる人って思えるよね…」


 ヒナタもウンウンと頷く。


「それはねって言って神様の像にある後光あるよね?あれと一緒で見た目や肩書など、一つ目立ったよい特徴をもっていると、その人全体の評価に大きな影響を与えて信用してしまうっていう認知バイアスの一つなんだよ」


「「認知バイアス?!」」


「うん、認知バイアス、まぁ簡単に言ったらってやつ。それでミツキさんはって思いこまされてるんだよ」


「そんな事ない!本当にミツキさんはすごい人で!」

 イブキが言い返そうとする。


「うん妄信しちゃっている時点で、それは。自分の考えや信念を支持する情報を重視し、反対する情報を無視してしまうという物だよ」

 

「それも認知バイアスってやつの一つなの?」

 ヒナタが驚きを隠せずに聞く。


「まずは雑談をしてひなたのニーズについて聞いていたよね。そこで「はい」っていう返事をもらえる質問をしておいて最後の自分の要求にも「はい」をもらいやすくなるだよ」

「あ!確かに!『はい』って言ってた!」

 ヒナタもピンと来たようだ。


「最近の出来事から貯金への不安を煽るのもといってそれによりひなたは貯金をするのは難しいと思い込む。『って思うよね』って話から『自分がなぜこの仕事を続けているか』という質問をする事により心の中のにすり替えたんだよ」


「あ、確かにあの一言でそれまでって思っていたのがっていう方に興味を持って話を聞いてた…」


「人はストーリーが大好きだからね…

 そこから苦労をしなくてもお金が入る話をした。これはっていって人間が心理を利用しているんだよ。ほら、勉強を計画していたのにゲームや動画とかどうでもいい事をしてできなかったとかあるよね?」

「はい…あります…」

 ヒナタも身に覚えたがあるようだ。


「で、一旦席を外し、友達が不安を聞いてしかも『一緒に頑張ろう』っていうのはマニュアルだろ?イブキ」

 図星だったらしくイブキは目を下に伏せた。


「『一緒に頑張ろう』『みんなもやっている』は周りに合わせたくなる調を利用しているんだよ。ほら夢の国でカチューシャつけて楽しみたくなるけど出で電車とか乗ったらしている人がいなくなって外したくなるのと一緒」

「分かる!みんながやっているから…って言われた時ちょっとやった方がいいのかなって思った」


 明るく答えるヒナタをアオイがメッといなす。


「もう後は通信番組で良く見られるやつだよね。最初に高い金額出して安くなると言って安い金額を出してを出させる

 魅力を感じさせたら今度はなんて言ってっていう心理を利用しただよね。人間は利益よりも損失の方が受けたくないからね」

「確かに!通信番組でもよくやってるね」

 ヒナタが納得する。


「本当は苦しいんだろ?イブキ…元なんて取れてないんじゃない?」

「う、うるさい…払った分は取り戻さなきゃ…」


「うん、それがなんだって。続けていく方が損失が大きいよ」

 やさしくアオイはイブキに話しかける。


「勉強代だと思って早くやめた方がいいよ。上に行ったら儲かるって言っているけどマルチは上の人しか儲からないシステムだから、もうイブキが上に行くっていう事は無いんだよ?」

「そんな事ない!マルチじゃない!そんな物に引っかかる訳がない!」

 イブキは自分は絶対に違うと聞く耳を持たない…

アオイはため息を一つついた。


「うん、それはっていうって言うんだよ…」

「違う!もういい!帰る!」


 そう言って怒ってイブキは帰って行った。


「ふぅぅぅぅ。洗脳は中々解けないね…ヒナタが引っかからなくって良かったよ」

「…アオイありがとう。あともうちょっで危なかった…イブキ…大丈夫かなぁ」


「もう18歳!成人だ!大丈夫だ!きっと!じゃ!終わったし!約束のSPA行こう!イヤな事も全部流しちゃおう!」

 ヒナタと違ってすぐ気持ちを切り替える事ができるのがアオイのいい所だ。




(まぁ友人と金は失くすだろうけど…命があれば大丈夫…)

 そう思ったけどアオイはもう言わなかった。



 SPAに到着した。

 岩盤浴、漫画がたくさんありビーズクッションやソファ、いろんなリラックスできるスペースがあり一日中楽しめる場所でデートとしても人気の場所だ。


「じゃ、着替えたらここで集合で!」



 そう言ってアオイは女子更衣室、ヒナタは男子更衣室へと入って行った。


          了


~~~~~~~~~~~~~~~~~

 お読みくださりありがとうございました。

 さて、アナタの頭の中でアオイ、ヒナタ、イブキ、ミツキは男性でしたか?女性でしたか?


 無意識の思い込みで性別を感じてませんでしたか?

 内閣府男女共同参画局ではと言っているようです。まぁ簡単に言えば

「男の子だからランドセルは黒。女の子だからランドセルは赤」なんていう潜在的にある思い込みだそうです。


 あなたはどうだったでしょうか?

ネタバレ禁止をお願いするほどじゃないかもしれませんが…ネタバレ禁止でお願いします┏○))


「羽」「10」「命令ノルマ」で結局思いついたのはマルチという私の頭脳の乏しいとこよ……








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ココロの中の罠【全3話】【お題で執筆!! 短編創作フェス】【羽】【10】【命令】 Minc@Lv50の異世界転生🐎 @MINC_gorokumi

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