第5話想愛故に



青天の霹靂。

言った相手の顔をまじまじと見る。

かけらも冗談の香りはない。



どう言ったものか、固まる僕に正人さんは何処かが痛いのを堪えるようなら顔をしながら。


別れよう。て。

全く喧嘩もなく、全て順調に好きが募り、このまま続く未来しか無かった世界が突然真っ暗に。


さっきも、趣味が合うねだの、可愛いだの話していて。2人に不満の影なんてなく。


戸惑う。だが。


『尚は、祝福される相手と幸せになってほしいんだ。せめて、僕のような老い先短い人間より、長く寄り添える相手とか。分かるだろう?』


正人さんは、真剣だ。

そして、責任感が強くいつも僕を氣にかけ守りたいと言い助けてくれてきた。

だが、この先の自身や、僕を守る力の維持が難しいからと言う。


傷つけたくないと。


僕らの関係は。

親子ほどの歳の差、社長と、大学生、そして。

彼の資産を狙う彼の親族や部下がいるなか内緒。それは権力争いに僕を巻き込まないため。


そして問題は何より。

婚姻は結べない。世間に出せない。

同棲同性同士の生活は、出来ても。


家族になれない。



そして。

彼に病の診断書が出た。

若くして、認知症になったと。

もうこれからは、自分のことを忘れていく未来しかない、だからと。




人間関係を整理し。

引き継にをし。

正人さんは、施設に暮らすと引っ越した。


彼が内緒で弁護士と作ったこの住まい、2人の愛の巣と、残りの大学費用とすこしの品を残す、遺言のような書類と、手紙を残して。




『君を忘れるのが怖い。

まだ覚えているうちに離れようと思ったんだ、君を知らない人て言って、傷つけるなんて。

耐え難い。


わがままだ。

だが。

許して欲しい。』



ああ。

早く生まれていたら。

同い年だったら、いやせめて早く出会えていたら。


おもう、もしもが、自分を責める。

痛い。


掴めた恋が。

愛が。



指をすり抜けた。

未来失う、傷つくのも避けたいが。

今、早々に別れが来るなんて。


愛だと思って許してと書いたその字が正人さんにしては乱れていて。

そこに嘘はない、だけども。



僕にはあなたしかいないのに。


結婚式も、婚姻届も出せない。

側から見たらずっと恋人にしかならない関係。それでも。


恋していたかったし。

恋しているのに。

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