壱④
祓師塾というのは未来の
祓師塾で学ぶ学生呪術師達は、
祓師塾入塾からずっと涼とともに首席に名を連ねてきた紅珠は、もちろん第一席で明仙連からの指名を受けた。きちんと確かめたわけではなかったが、紅珠にお声が
このまま二人
そう勝手に思い込んでいた。
祓師塾を卒業する、あの日までは。
「は? 俺、明仙連には行かねぇぞ?」
紅珠がその
「……は?」
「いや、だから俺、明仙連の呪術師にはならねぇんだって」
あまりの衝撃に
「そもそも俺、一言も言ってねぇだろ。明仙連に入るって」
「は……はぁっ!? じゃ、じゃじゃじゃ
確かに言われてみれば、涼からそういった
だがそれ以外の道をほのめかすような発言も、涼は口にしていなかったはずだ。
──だ、だって……なんで……っ!?
祓師塾に
そんな
だというのに、涼はいつものごとくハンッと紅珠を
「思い込みが激しいと、相手の術中にハマることになんぞぉ~? お前、先生達からも再三注意されてたじゃねぇか。まだ直ってねぇのかよ、その
「そっ、そんなこと、今はどうでもいいのよっ!」
紅珠は必死に己を立て直すとズイッと涼に
「あんたは、どこに進むの? 明日からどうするの?」
「さあねぇ?」
「さあねぇって……!」
「ま、何もしていなくても、勝手に日は
「~~~~っ!! そういうことを言ってるんじゃないっ!!」
正直に言おう。あの時の紅珠は
毎日顔を合わせて、
涼が紅珠と同じ道に進まないということは、この『日常』も今日でおしまいということだ。明日からも変わることなく続いていくと勝手に思い込んでいた日常は、今日この場限りで『日常』ではなくなる。
おまけに涼は、どうやら紅珠に己の行く先を告げずに行方をくらませるつもりでいるらしい。六年間も腐れ縁をやってきたのだ。はぐらかし方でその辺りの
思い返せば、涼がどこに住んでいるのか、どんな家族の中で暮らしているのか、そういった類の話を紅珠は一切聞いたことがなかった。その手の話題を向けられるたびに涼が
ここで涼を取り
その事実に、どうしようもなく胸が痛んだ。
「……どうしても話す気はないってのね、あんた」
低く問いかける紅珠に、涼は言葉では答えなかった。ただ
その笑みと
──あくまで
「涼! 私と一本立ち合いなさいっ!!」
刻々と強くなっていく胸の痛みを
「あんたが負けたら、今後のこと、洗いざらい説明しなさいっ!!」
紅珠から叩き付けられた言葉に、涼は
「ほぉん? んじゃ、お前が負けたらどーすんの?」
新たに涼が顔に広げたのは、好戦的な笑みだった。『己が負けることなど万にひとつもありはしない』と言わんばかりの表情に、紅珠の
「あんただって私に何か要求すればいいでしょ!?」
「おん? つまりこの勝負に勝ったら、お前は俺の言うことを何でも聞いてくれるってこと?」
「
「へぇ? いーじゃん。受けて立つわ」
そんな売り言葉に買い言葉で
その結果、紅珠は涼に負けた。
そりゃあもう、今まで
「お前、気が動転してると
信じられない結果に地面に両手と
「俺ぁ心配だなぁー? 明日から俺っていうお
「……っ!」
その言葉が憎らしくて、悲しくて、つらくて。とにかく現実を認めたくなかった紅珠は、反射的に
だがその拳はスカッと空を切った上に、次の瞬間、紅珠は涼が起動させた
煙幕が晴れた時にはすでに涼の姿は
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